ゴールドコラム & 特集

Vol.25-なんと、りくつなぁ?

「りくつなぁ?」という金沢ことばがあります。これは、「よくできている」「ちゃんとなっている」「理にかなっている」といった意味を表すもので、褒め言葉です。
台所用品の便利グッズに「りくつなぁ?」、弟や妹の面倒を見る子どもに「りくつなぁ?」。
箔の職人の仕事場にも「りくつなぁ?」がいろいろあります。


8枚ずつの紙束で菊づくりしているところ。しゅっしゅっと紙を回転させるようにずらしていきます。

箔打ち紙の仕込みの各段階で行う作業に「菊づくり」があります。これは、紙を数枚ごと(4枚だったり8枚だったり。枚数は工程段階や、職人、その時の紙の厚さなどによって若干異なります)にずらして重ねてゆくというもの。仕上がった様子が菊の花のようであることからこのように言われます。

殺風景な仕事場にあって、まさに花が咲いたような、そこだけ愛想らしい雰囲気になります。でも、カワイイだけじゃないんです。これは、箔打ち紙の仕込みにおいての大事な仕事なのです。

たとえば初めて湿りを紙に入れる段階では、数枚ごとの紙束と、予め水に浸しておいた濡れ新聞紙を1枚ずつ交互に積み重ねていきます。濡れた手でも、「菊」になっていれば紙束もつかみやすく仕事もスイスイ。
紙に湿りを入れる時は、すべての紙に水分を行きわたらせなくてはいけませんが、1枚ずつでは湿りが入りすぎてしまいますし、効率も悪く、作業もしづらい。
箔打ち紙の仕込みの仕事では、「菊づくり」という下準備が大事なのです。
りくつなぁ?。

ちなみにある職人は、先述の紙束の間に挟み入れた濡れ新聞を、後に部屋の掃除に使うそうです。これも、りくつなぁ?


箔打ち紙の「菊」の完成。奥は、新聞紙の「菊」。大輪の菊と小菊、といった感じです。


広物帳のページの端?。箸を差し込みやすくカットされています。


広物帳のページの端?。?と?が交互になっているため、ページをめくりやすい!


ちなみにある職人は、先述の紙束の間に挟み入れた濡れ新聞を、後に部屋の掃除に使うそうです。これも、りくつなぁ?

ご紹介したいものはほかにもいろいろありますが、ワタクシが皆様にぜひお伝えしたい「りくつなぁ?」大賞は、なんといっても広物帳。とても地味(失礼!)に見えながらも、コワザが効いているアイテムです。
広物帳とは、打ち上がった金箔を箔打ち紙の束から一枚ずつ抜き取り、金箔を一時保管するためのもの。極薄の金箔に傷がつかないよう、上質で柔らかい手漉きの和紙が帳面状になっています。広物帳は、金箔を切り揃える「箔移し」の職人に渡されます。
「りくつなぁ?」ポイントにヒットしたのはページの端です。少しカットしてありますが、カットは一頁ごとに交互に角度が違います。そのおかげで、箔箸を挿し入れやすく、透けるほどに薄い紙なのにスイスイとめくれるわけです。
初めて見たとき以来、いまだに「りくつなぁ!」と思います。
大ワザな仕掛けじゃないところがまたイイのです。

箔づくりは、職人によって異なる部分が多々あり、また同じ職人であっても季節やその時々の状況によっても異なります。ゆえに、その工程は単純に数字やことばで言い表せないことが多く、取材する側にとってはどこか割り切れないような感覚になることが時々あります。
しかし、違う目線で見てみるとどの工程も道具も理にかなっているものばかり。
まさに「りくつなぁ?」だらけです。


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プロフィール

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HAKUZA

世界に誇る伝統の技を残し、世界遺産となった中尊寺金色堂など重要文化財の金箔を手がける。2002年、「純金プラチナ箔」(特許取得)を開発。箔本来の力と美しさを「箔品」として表現し、「箔座本店」をはじめとする石川県金沢市の直営店のほか、東京日本橋で旗艦店「箔座日本橋」を展開。

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