ゴールドコラム & 特集

Vol.4-金箔づくりにこめられた思い

VOL.3では、金箔の製造工程の大まかな流れを簡単にご説明いたしました。大まかに、ですよ。以前、取材にいらしたメディアの方から「何工程くらいあるのですか」と聞かれ、確認のためにある職人の方に質問したところ、「何百とある」という答えが返ってきました。 ええっ!どうしてそんなにもなるの?
その職人の方いわく「ひとつとして同じ工程はない」とのこと。それはどういうことかというと…


紙仕込み。ここで紙にシワが入ると箔に影響が! どの段階も神経を使います

例えば、箔打ち紙の仕込み。紙に湿り気をあたえ、束にして打ち、くっついた紙を一枚ず つはがし、また揃えて打って、はがして、藁の灰汁・柿渋・卵白などに浸して、絞って、揃えて打って…といったことを何度も繰り返して仕込んでいきます。ここで「繰り返し」 と言いましたが、実は同じように見えても同じことをしているのではないのです。その時その時で紙は状態が異なる。日々気温も違えば湿度も違う。それに同じ事をしているつも りなのに同じ結果になるとは限らず、紙の状態を見ながら作業の内容を調節して仕込んで いる…同じことの繰り返しではないから、何百もの工程になるのだと。屁理屈と受けとれ るかも知れませんが、これが職人の思いです。職人の仕事を見ていると、ひとつひとつに 心が込められているのが伝わってきます。言葉では説明できないくらい深いものがあります。

また、紙仕込みを含めて箔の製造工程は、職人によって若干異なるところもあり、必ずしも同じというものではありません。それぞれに修練を重ねて箔をつくっています。熟練の 職人も「これでよい、というものはなく、常に向上心をもって研究し技を磨き続けなけれ ばならない」と言っています。


箔打ち紙に記された職人の印

余談ですが、箔打ち紙、後の「ふるや紙」ですが、文字などが入っているのを見たことはありませんか。それは、紙仕込みの際、紙の目の縦横・表裏を判別するために一枚 ずつ印を押すからなのです。箔は紙の目に沿って延びるため、縦目と横目が交互になるよ う紙を重ねてゆきます。印は職人によって異なり、恋人や奥様の名前の印を押していた職人がいたそうな。なんて粋なこと!そういう意味でも職人の熱?い思いが込められているのですねえ。

また、「ふるや紙」の紙の色が濃かったり薄かったりするのは、職人やその時々の仕込みに よって異なるからです。もちろん、あぶらとり紙としての品質にはまったく問題はございません。
美しい光の膜・金箔製造の陰には、金箔づくりに賭ける職人の熱い思いが、汗と涙(?) が込められているのをご理解いただければ幸いです。あ、「ふるや紙」をお使いのお客様、 実際には職人の汗と涙は混合されていませんからご安心ください。


箔そのものの美しさ、質感をご覧いただける「黄金の茶室」

職人が丹精してつくった金箔は、いかに美しくともそれだけではなかなか世に知られるこ とはありません。すばらしい美術工芸品は賞賛されますが、それに生かされている金箔が 注目されることはほとんどありません。金箔は加飾材料なのです。

そこで、箔座は「もっと金箔そのものの美しさを知ってもらいたい、箔職人の手業を多くの方々に見てもらいた い」という思いから、平成2年オープンの箔座本店に「黄金の茶室」をつくりました。
そして平成16年には箔座ひかり藏に「黄金の蔵」を。どちらも、箔そのものの美しさ、質感 を見ていただくためにも表面コーティングをしてありません。残念ながら触れていただく こと、ご入室いただくことはできませんが、ぜひじっくりと間近にご覧いただきたいと思います。


箔座

プロフィール

箔座

HAKUZA

世界に誇る伝統の技を残し、世界遺産となった中尊寺金色堂など重要文化財の金箔を手がける。2002年、「純金プラチナ箔」(特許取得)を開発。箔本来の力と美しさを「箔品」として表現し、「箔座本店」をはじめとする石川県金沢市の直営店のほか、東京日本橋で旗艦店「箔座日本橋」を展開。

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