ゴールドコラム & 特集

プラチナ・パラジウムの需給予想と相場

今週はStandard Bank のアナリストが発表した今後のプラチナ・パラジウムの需給予想を紹介します。

■プラチナの需給(トン、2013年以降は予想)



■パラジウムの需給(トン、2013年以降は予想)



・プラチナ・パラジウムとも供給不足は少なくとも2016年まで続く。

■プラチナ・パラジウム需給バランス予想



プラチナは2011年から、パラジウムは2012年から供給不足に陥っていますが、その傾向は今後も続くと予想しています。2012年第3四半期からはランドが安くなった分、南ア生産者には少し安心を与える材料となりましたが、我々が計算しているランド建てPGMバスケット価格(注)は7.4%上昇しただけで、これではまだ南アでのPGM鉱山生産の増加を促すほどのものではありません。(ちなみにQ4:2012平均はR10,860/PGM onz。Q1 :2013ではR11,670/PGM onz)南アのPGM生産者が増産に動くようになるためにはあと少なくとも10-25%ほどランド建ての価格が上昇する必要があります。Anglo Platinumが2月にいくつかのプラチナ鉱山の閉山を含むリストラ案を発表し、それによって相場は上昇しましたが、このリストラ案が予定通り実行に移されるのかはまだこれからの話であり、南アの政治、社会、そして労使問題が今後どのように発展していくかによって南アのプラチナ生産量は変わっていくだろうと思えます。現在は将来にわたってプラチナの生産が増えるという情況ではないと思われます。

■プラチナ・パラジウム需給バランス予想



■南アランドの動きチャート



 一方パラジウムの生産量は約205トンで2012年2013年はほぼ変わらないことを予想。最大の生産国ロシアの動きは価格の動きとほぼ連動しており、そのロンドンへの輸出の動きをみると、2012年1月から11月の間の輸出量の5トンのうち43%は2月に集中しており、このときは700ドルを越えていたときで、3月からは価格が下がり始め、7月には560ドルまで下落しました。3月から8月の間はわずか200kgまで減少していました。そして南アでストライキが起こり相場が上昇した9月にはその量は700kgまで増加しました。ロシアは相場を見ながら売却量を決めるというオペレーションをしています。相場が下がると売らなくなることから、下値を支えていると考えることができるでしょう。

■パラジウム価格チャート



・需要サイド

 2013年2月の欧州の新車登録台数は1月の前年比8.7%に続き、10.5%のマイナスとなりました。ドイツでは10.5%の減少、フランスでは12.1%の減少であり、特にプラチナにとっては消費者の自動車購入の弱さがそのまま相場の弱さにつながっていると感じられます。しかし米国、日本、欧州、中国という四大拠点をまとめると中国と米国の販売の伸びにより、全体でも少し明るい兆しが見えます。

・相場見通し

 やはり供給サイドの不安要素は大きいですが、自動車触媒の成長は弱いまま。全需要の30%を占める宝飾はプラチナが1750ドルを越えてくると急激に落ち込むということから、Standard Bankでは2013年の平均価格予想は1650ドルとしています。(2012年の平均価格は1553ドルでした。)しかしながらこの予想は相場が急落する前のものであることを付け加えておきます。

 個人的には1400ドルは南アのプラチナ生産者のコストと言ってもよいレベルであり、長期的にみてもこのレベルは、ゴールドの下落の影響で一瞬割り込むことがあっても、長期的にそのレベルを維持はできないと思われます。南アの生産者がさらなる生産縮小に動かざるを得ないからです。またパラジウムはプラチナよりも供給不足が深刻になりそうです。特にロシアが現在のように売却量をコントロールしており、その上、プラチナをパラジウムで代替するという動きも多くあり、今後の上昇の可能性としては、プラチナ以上にあると思います。

(注)PGMバスケット価格:60%プラチナ、30%パラジウム、10%ロジウムの合成価格。南アではこれらが一緒に生産されることから、単一メタルでのコスト計算は非現実的のためこのような指数とも呼ばれる価格が使われている。

以上

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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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