ゴールドコラム & 特集

プラチナの現状

 今週はまたプラチナに関して書きましょう。6月に入ってプラチナがまた上昇してきました。その背景にあるのは南アの労使問題からくる投資マネーの動きだと言えます。その投資マネーの動きと現物の流れからの現在のプラチナのマーケットの情況とスタンダードバンクのアナリストの今後の価格予想をみてみます。

(プラチナ需給予想)



(一ヶ月チャート)



(一年チャート)



「日本・中国の現物買いと先物の投資家ポジション」

 今年に入り価格が下がったことで日本と中国のプラチナの現物の買いが伸びています。日本のプラチナの輸入量は2月2.6トン、3月3.4トン、4月3.8トンと輸出を大きく上回っています(輸出は2月1.9トン、3月1.7トン、4月1.1トン)。中国も3月4月は大幅に増えています(下のグラフ、中国のプラチナ輸入の推移)。日本の場合はその大部分は投資用需要だったと思いますが、中国では宝飾の材料として需要が強く、世界の宝飾需要の2/3を中国が占めています。産業用需要はまだまだ弱い状況にありますが、中国、日本の買い、南アでの労働者賃金問題のための供給不安、そして先物市場(NYMEX)における大幅な投資家買い越しポジション(下のグラフ、NYMEXの投資家ポジション)が整理されたことにより、下がったら買いたいと考える投資家が待っていることから、価格は上昇傾向にあります。

(中国のプラチナ輸入)



今年に入ってから大きく輸入が伸びているのがわかります。価格が下がるとすかさず買ってくるのですね。

(NYMEXの投資家ポジション)



 大きく膨らんでいた投資家のロングポジションが5月の第三週に劇的に減りました。南アでの鉱山業界の緊張が少し緩んだこと、5月前半のバーナンキFRB議長の証言を前にしてQEの継続性について疑問が生じたことなどがその原因として考えられます。ネットポジションで約7.5トンものロングが減少。(ロングの減少は4.5トン、ショートの増加が3トン)これは逆に買い余力が増えたことと逆に売りがある程度出てしまったことを意味しており、強気材料。

(ETF)



プラチナETFの残高は増え続けています。5月単月で約10.5トンの残高増加しています。

(スイス税関統計)



 スイスは4月に大きな輸出となりました。その大部分はロンドン向け(Loco London決済のため)であったようですが、中国の輸入が急増していることもその一部だと思われます。需要が旺盛なときはスイスからプラチナは輸出され、需要が盛り上がらないときは、南アからスイスへの輸送が多くなり、スイスは輸入国になるという傾向があります。

「プラチナ価格予想」



 プラチナは上昇を予想。2015年には2000ドル越えも。長期的にも1900ドルくらいのマーケットになることを予想。生産コストの上昇、南アでの供給の不安、そして景気回復による需要の拡大を考えるとやはり強気とならざるを得ない。1500ドル以下の低迷期は長期的には買いのチャンスであると考える。

以上

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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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