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ガソリン価格、再び値上がり必至の状況に?シリア情勢で原油価格が急騰中?

資源エネルギー庁が8月28日に発表した石油製品価格調査によると、8月26日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は前週比変わらずの1リットル=160.2円となった。2週連続の横ばいであり、7月から8月上旬にかけてのガソリン価格高騰局面が一服したことが窺える。

都道府県別では、値上がり11道県、横ばい20府県、値下がり16都府県となっており、特に関東から中部地方にかけて値下がり地域が目立つ。

1)7月の海外原油相場高騰の価格転嫁がほぼ一巡したこと、2)為替市場で円安圧力が一服していること、3)お盆休みの行楽需要が一服したこと、などがガソリン価格の上昇にブレーキを掛けている模様だ。

石油連盟の週報を元にガソリン出荷量を推計すると、8月18?24日の週は前週比-12.6%の111万4,289キロリットルとなっている。いまだ100万キロリットル台の高水準を維持しているが、既にガソリン需要は今季のピークを確認した可能性が高くなっている。最近の猛暑一服で空調使用に伴うガソリン需要の押し上げ効果も一巡し、大幅な値下がりこそ難しいものの、更にガソリン価格高騰が続くような事態は回避できる見通しが強くなっていた。



■シリア情勢を受けて海外原油が急騰中

しかし、足元では更にガソリン価格の高騰を促しかねない動きが報告されている。すなわち、海外原油相場が再び高騰しているのだ。

米政府が、シリアのアサド政権が反体制派に対して化学兵器を使用したとの疑惑が強まる中、西側諸国が数日以内にも軍事行動に踏み切る可能性が高くなっている。内戦状態への本格的な介入には消極姿勢が示されているが、ミサイル攻撃などで反体制派の支援が行われることで、同地区の地政学環境が一気に悪化するリスクが高まっている。

シリアの産油量は通常時でも日量35万?40万バレル程度であり、2011年の「アラブの春」以降に大幅に減少していることで、直ちに原油供給トラブルが発生する訳ではない。既に実質的には殆ど原油生産は行われておらず、仮に西側諸国がシリアに対するミサイル攻撃などに踏み切ったとしても、シリアの原油供給体制に大きな変化は生じない見通しである。

ただ、この地域の紛争やイランやイラク、イスラエルやパレスチナといった「火薬庫」を巻き込む可能性もあり、そうした事態になると中東地区からの原油供給が大きなダメージを受けるリスクも存在する。

現段階ではあくまでも供給「リスク」に留まるが、軍事行動が開始されるとどのような化学変化が発生するのかが分からないだけに、原油価格はリスクプレミアムを織り込む形で急騰している。欧州のブレント原油価格は、前週は1バレル=110ドル前後で取引されていたのが、本日(8月28日)は117ドル台まで急騰している。一部金融機関からは、このままシリア情勢の混乱状況が続いた場合には、150ドルまで急騰するといった見通しも発表され始めている。

本日の東京原油先物相場(期先)は、今年の最高値を更新しており、今後は改めて原油調達コストの増加分をガソリン価格に転嫁する必要性が高まろう。



■ガソリン価格は再び上昇する可能性

今後のガソリン価格は、シリア情勢がどのような展開を見せるのかに強く依存することになる。しかし、いずれにしても足元の原油価格が急騰している以上、少なくとも短期的には改めて値上げ圧力が強まる可能性が高いとみている。

こうしたシリア情勢の急変がなければ160円台割れの可能性も想定していたが、これで160円割れの時期は先送りされる可能性が高く、逆に160円台前半から中盤で地合の強さが確認されることになるだろう。既に夏の行楽需要が一服した季節要因を考慮すれば、短期間で5円、10円と値上がりするリスクは限定されている。ただ、ここ2週間のガソリン高一服は、一時的な踊り場であった可能性が高くなっており、ドライバーは改めてガソリン価格の値上がりリスクへの準備が必要な状況となる。現行価格からの大きな値上がりが回避できれば、幸運とも言える状況だと考えている。

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マーケットエッジ

プロフィール

小菅 努

Tsutomu Kosuge

マーケットエッジ株式会社 代表取締役

1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。

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