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銅相場急落が警告する「第二のベア・スターンズ」シナリオ?

上海期貨交易所の銅先物相場が急落している。3月10日の取引では、寄り付きからストップ安(前日比-5%)に貼り付く展開になっており、約4年ぶりの安値を更新している。今年は1月2日の1トン=5万2,730元をピークに、既に緩やかなダウントレンドを形成していたが、本日は前日比-2,460元の4万6,670元まで一気に下げ幅を拡大している。

背景にあるのは、中国経済に対する不信感だ。3月7日には、中国の太陽光発電関連メーカー、上海超日太陽能化技が利払いのできないデフォルト(債務不履行)状態に陥っている。同社の規模は決して大きくないが、マーケットではベア・スターンズの実質的な経営破綻がその後のリーマン・ブラザーズ破綻に至った流れが回顧されており、「第二のベア・スターンズ」ではないかとの懸念が広がっている。

振り返ってみれば、ベア・スターンズは実質破綻状態にあったものの、突然の倒産劇がパニック的な金融危機に発展するリスクが警戒され、当時のポールソン米財務長官がJPモルガン・チェースによる救済買収を働き掛けたと言われている。しかし、これによってマーケットに大手金融機関の破綻リスクが周知された後、リーマン・ブラザーズについては同様の救済の動きは見られず、その後のいわゆる「リーマン・ショック」へと発展していった。

仮に今回の上海超日太陽能化技の社債利払い不能がこうしたベア・スターンズと同様の「アドバルーン」的な性格を有しているのであれば、その後はいよいよ本格的な企業破綻の動きが出てくる可能性がある。世界的に流動性が引き締まりつつある中、今年の中国企業は多くの社債償還を迎えることになるが、借り換えができずにデフォルト案件が多発するとの見方が広がっている訳だ。

加えてタイミングの悪いことに、8日に発表された中国の2月輸出は前年同月比-18.1%と大きく落ち込んでおり、実体経済に対する信認も一段と低下している。春節の一時的な落ち込みの可能性もあるが、「第二のベア・スターンズ」発生かと疑心暗鬼が広がる現在のマーケットでは、素直にリスクオフの動きが促されている。

マーケット全体をみれば、中国リスクに対しては比較的冷静な反応が示されている。しかし、銅は中国が世界の約40%を消費するいびつな需要構造にあるだけに、比較的中国経済との連動性が強いと言われる商品市場の中でも特に中国リスクに対して敏感に反応することになる。今回の銅相場急落は、中国発のリスクオフの波がもう一度くる可能性を警告した危険なシグナルと受け止めるべきなのかもしれない。



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マーケットエッジ

プロフィール

小菅 努

Tsutomu Kosuge

マーケットエッジ株式会社 代表取締役

1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。

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