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NY金先物市場、過去最高に達するファンド売りの意味

米連邦準備制度理事会(FRB)の資産購入プログラムがまもなく縮小時期を迎えるとの見方が強まる中、ドル建て金相場は2011年1月以来の安値を更新している。機軸通貨ドルに対する信認回復の動きが本格化し始める中、投機マネーは高利回りを求める動きを活発化させており、金利を生まない金市場に対する投資家の関心が薄れている。

シンボリックな動きが見られるのが金上場投資信託(ETF)市場であり、年初からの累計で既に473.5トン(18%)ものポジションが精算(解約)されている。金ETFは、機関投資家などの運用資金を金市場にも流入させる目的で03年に設定されたのが始まりだった。このため、株式市場と金市場との資金シフトが容易になったことが、これまで金市場に対する投資需要を創出するのに大きく寄与してきた。しかし、これはマネーフローが逆流し始めると金市場からの資金流出が加速し易いことも意味し、資金シフトの流動性という従来のメリットがデメリットにも変わり得ることが露呈した形になっている。

金ETFの換金売りに関しては、「金需給の憂鬱 ?第1四半期の金需給の傾向と対策?」でも解説した通り、カストディアン(有価証券の管理機関)による金保管ではなく、実際に金現物を手元においておきたいという投資家のトレンドから、現物投資需要にシフトしただけとの指摘もある。金ETFの換金分の一部では、金現物を引き出す動きなども報告されており、見掛けの数値程には金投資需要は減少していない可能性もある。ただ、過去10年にわたって主要な「需要」項目となっていた金ETFが、逆に「供給」項目に変化し始めていることは、「コモディティとしての金」にとって強力な逆風であることは間違いない。

■金先物市場で資金流出は発生していない?

一方、ここで気になるのは先物市場における資金動向であるが、COMEX金先物市場においても大口投資家(ファンド)のポジション動向には大きな変化が見受けられる。

米商品先物取引委員会(CFTC)によると、5月21日時点でファンドの買い越しは8万0,259枚(249.63トン)となっており、08年11月18日以来の低水準を記録している。昨年末の15万0,096枚(466.85トン)と比較すると、約5ヶ月間でファンドが金価格の上昇に賭けている資金額が47%も減少したとの評価が可能である。

ただ一般的なイメージと違うのは、必ずしも金先物市場から投資家が離脱して、投機資金を株式などの高利回りが期待できる資産に映している訳ではないということだ。

上述の通り、ファンドが金先物市場における買いポジションを圧縮していることは間違いない。しかし、COMEX金市場でファンドの買い越しが大幅に減少している原動力は、買い方の投げ売りというよりも、寧ろ投機売りが膨らんでいる影響が大きいためだ。

年初から直近5月21日までの期間で検証してみると、ファンドの買いポジションは当該期間に1万1,035枚減少の18万9,401枚となっているのに対して、売りポジションは5万8,802枚増加の10万9,142枚となっている。要するに、金先物相場の急落は「投機マネーの流出」といったグレート・ローテーション理論よりも、単純に下げ相場の値幅取りを狙った投機家の参戦の影響が大きくなっている。



ファンドの買いポジションは減少したといっても、08年に量的緩和第1弾(QE1)が開始されてからのレンジ内の動きである。一方、売りポジションは今年に入ってから急増しており、積極的に相場の押し下げを意図して金市場に流入している投機マネーが増えていることは明らかである。金買いポジションを保有する必要性低下が値下がりを促しているのではなく、下げ相場による値下がり益を狙った動きが活発化している。

先物市場ではその性質上、いずれかの時点でポジションの反対売買を迫られることになる。買い方の投げ売りで急落した相場の反発には大きなエネルギーが必要だが、売り方の参入で急落した相場は、きっかけさえあれば急反発する余地がある。問題は、ファンドの多くが引き続き、売り方針で更に値幅を取ることが可能と考えていることである。

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マーケットエッジ

プロフィール

小菅 努

Tsutomu Kosuge

マーケットエッジ株式会社 代表取締役

1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。

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