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金需要は大幅に落ち込んだが 市場は落ち着きを取り戻す

機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol33 Autumn,2014(2014年9月)号より。

 「ゴールド・デマンド・トレンド 2014年第2四半期」(ワールド ゴールド カウンシル発行)によると、今年4?6月期の世界の金需要は合計963.8トン(金額ベースでは399億米ドル)だった。「異常な年」となった2013年と比較すると大幅な落ち込みだが、過去10年間で見れば、ほぼ平均並みの水準である。

分野別に前年同期と比べると、宝飾品需要は3分の1程度に縮小し、金地金・金貨の投資需要も半分以下に落ち込んだ。このように宝飾品や金地金・金貨の需要が落ち込んだのは、前年同期の25%もの金価格急落を絶好の機会ととらえ、インド・中国を中心に世界中で大量の金が購入されたことの反動と見られる。今年に入って金市場が方向感のない相場となる中で、すでに大量に前倒し購入していた投資家は様子見の姿勢を保っているようだ。

一方、金の現物を裏付けとするETFからの資金流出は10分の1に減少し、市場は落ち着きを取り戻している。また、世界の中央銀行等公的セクターによる純購入量は117.8トンで、14四半期連続の買い越しとなった。



金価格に影響を及ぼす7つの要因とは

 金はしばしば、「世界経済を映す鏡」と言われる。金価格は、世界各国の金融政策、為替・金利や株価の動き、経済成長率、政治・経済的イベントなど、さまざまな経済動向の影響を受けて変動するからだ。

このように金の価格に影響を与える要因は多岐にわたるが、それらは「通貨」「インフレ」「金利水準」「システミックリスクとテールリスク」「短期の投資フロー」「消費者の支出と所得の伸び」「供給サイド」の7つでほぼ説明がつく。

しかしこれらの中には、金価格の「変動」に直接的に影響を与え、定量モデルを用いてその影響を示すことができるものもあれば、需要や供給の量を通じて金価格の「水準」に影響を与えていると考えられるものもある。

また金の需要と価格の関係を見ると、宝飾品、投資、テクノロジーといった分野ごとの需要量と価格との関係は、それぞれに全く異なっている(図参照)。宝飾品の場合、金の「モノ」としての性格が強く表れ、価格と需要の法則(価格が上昇すると需要が減少し、価格が減少すると需要が増加する)が成立している。すなわち消費者はプライステーカーであり、金価格の水準を下支えしていると考えられる。

ワールド ゴールド カウンシル
リサーチ・アナリスト 津金 眞理子
Mariko Tsugane

詳細は、「金価格の決定要因」(ワールド ゴールド カウンシル、2014年7月)で解説している。http://www.gold.org/investment/gold-investment-research

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オル・イン(for All Institutional Investors)は、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、不動産といったオルタナティブ投資はもちろん、株式・債券の伝統的運用もカバーする、機関投資家向けの「総合運用情報誌」です。年4回(3月、6月、9月、12月)発行。

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