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金価格急落の一方で、旺盛な消費者需要は続く

機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol28 Summer,2013(2013年6月)号より。

■中国・インドの力強い宝飾需要

 先日ワールド ゴールド カウンシルがリリースした「ゴールド・デマンド・トレンド 2013年第1四半期」によると、2013年1?3月期の全世界における金の需要統計は、963トンと前年同期比13%の減少となった。宝飾品需要や金貨・金地など消費者需要が大きく伸びたものの、金ETFからの大幅な流出がそれを上回った。

 金宝飾品の需要は、世界各国の消費者からの需要に支えられ、金額ベースでは過去最高額の289億米ドルを記録した。中でもインドと中国が世界の宝飾品需要の63%を占め、けん引役となった。中国では旧正月関連の伝統的な金購入のシーズンでもあり、四半期ベースでの宝飾需要の最高値を更新。

またインドでは、春の収穫が豊作だったことが農村地域の所得にもプラスに働き、また通貨ルピーの回復により金のローカル価格が低下したことなどが好材料となった。1月後半の金輸入税の引き上げによる影響が懸念されたものの、これらのプラス要因で相殺された。

 一方、金の現物拠出型ETFからの需要は177トンの純流出となり、この四半期の需要全体を押し下げる大きな要因となった。ETFが保有する金のうち、約7%が売却された計算になる。また金貨や金地金への投資需要は378トンと前年同期比10%増で、宝飾品需要と同様堅調であった。

 1?3月期の世界の中央銀行のネット購入額は、109トンで前年同期比では5%減となったものの、7四半期連続で100トン以上の購入となった。引き続き新興国を中心にドルやユーロへの依存度を下げ、金による分散効果を追求しているとみられる。中でもロシアは、国産の金を中央銀行が購入するプログラムを継続し、金準備を約24トン積み増した。そのほか、韓国やインドネシア、アゼルバイジャンも金準備を増加させた。



■4月の金価格急落の影響は?

 4月に入り金価格は急落した。ロンドンの現物価格(*1)は4月12日に1535ドル/オンスから16日に1380ドルへ下落。主に米国市場で、先物や金を裏付けとするETFが大量に売却されたことがその引き金となった。ヘッジファンドや投資信託、機関投資家がアロケーション変更のために金の構成比を引き下げたと見られている。金ETFによる金需要は金全体の需要の6.5%に過ぎないが、金ETFが保有する金の保有量は、今年に入り2700トンのうち約350トンが減少した。

 一方、金需要の72%は一般消費者による宝飾品、金貨や金地金の購入である。金価格急落を絶好の購入機会ととらえ、金貨や金地金への需要が世界的に非常に強まっている。中国やインドの宝石店では在庫切れが生じ、米国や英国など世界各国で金貨や金地金が品薄状態となっている。また各国の現地通貨ベースでの金価格には、高いプレミアムが乗せられて取引されている。インドの4?6月期の金輸入量は前年比200%増の300?400トンになると予想され、引き続き金需要を下支えすると見られている。

 ETFから大幅に資金が流出するのとは対照的に、宝飾品や金貨・金地金の現物に対する強い需要が存在することは、他の金融商品では見られない現象である。金購入の目的はさまざまであり、金の需要は世界各地域、用途別に分散され、金特有の需要構造が浮き彫りにされている。

*1:London PM Fix=ロンドン地金市場協会(LBMA)のメンバーである貴金属ディーラー間で決められる金の現物取引価格の午後決め値。
【記事・データ協力:ワールド ゴールド カウンシル
ワールド ゴールド カウンシルは、金市場の育成を目的とする組織です。投資、宝飾、テクノロジー、政府関連分野において金需要を喚起するため活動しています。世界の主要金鉱山会社をメンバーとし、英国本部、日本、インド、中国、米国などにオフィスを有します。

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