NY金は、静かに10月4日の急落以降の戻り高値を更新しつつある。25日のNY市場では、1270ドル後半まで買われ、その近辺を維持。前日は発表された日米欧の製造業関連の指数(製造業PMI)が予想を上回ったことから、銀やプラチナなど産業用需要が主体の貴金属が買われる中で金のみ反落となっていた。
市場環境としては引き続き米利上げ観測をもとにしたドル高基調が続いている。25日は、現地10時に発表された10月の米消費者信頼感指数が市場予想(101.5)を下回る98.6に低下し、前月分の数字も104.1から103.5に下方修正されたことから、米長期金利はやや低下、ドルも弱含みに転じた。
メディアでは、発表された指数が予想より悪く、ドル高が一服し金は買われたというふうに伝えられていたが、実際にはドルはさほど売られていない。事実、25日はファンドが指標とするドル指数(DXY)は2月初旬以来の99ポイント台に乗せ98.72と前日比上昇で取引を終えた。つまりドルは弱くない。
このところの金市場の値動きや内部要因を見ていて想起するのは、10月以降の下げ過程で先物市場で膨らんだ売り建て(ショート)の存在だ。
ネットの買い越しが907トンあった9月27日時点でショートの規模は209トンだった。それが直近の10月18日のデータでは295トンまで膨らんだ。おそらく足元で想定したほどの下げに至らなかったことから、ショートの買戻しいわゆるショート・カバーが価格を押し上げていると思われる。
ではなぜ彼らの思惑が外れたのか?
それは価格の急落のタイミングが、ちょうどインドの需要期にあたったこと。また中国では来年の春節需要の手当て買いのタイミングにあたっていることがある。現物の買い引き合いが高まっているとみられる。インドはまさに今週から来週とンヒンズー暦の新年を祝う“ダンテラス”さらに“ディワリ”と祭典が続き、婚礼シーズンの山場に入るタイミングでもある。