亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

インドでの金需要に紙幣の強制交換という阻害要因

2016年12月01日 23時34分03秒 | 金市場
昨日のNY市場は、OPEC総会への関心の高さは言うまでもないが、金市場では企業向け給与計算サービスADPの全米雇用報告の上振れがまず流れを作った。市場予想16万5000人の雇用増に対し結果は21万6000人増。今年の6月以来の高い伸びに。このデータはこれまで労働省発表の非農業部門雇用者数と必ずしも整合性がなく、参考扱いだった。それでも無視はできず・・・・という位置付け。ところが10月に整合性を高めるために集計方法を見直し、サンプル数も増やしたと発表していた。それだけに今回の上振れは、米労働市場の拡大の加速を感じさせ、米長期金利の反発につながりドル高は元より、ファンドの金売りプログラムをヒットさせたとみられる。

足元の金市場で話題に上るのが、1200ドル割れでアジアなど実需筋の動向はどうだということ。中国は上海などでロンドン価格に対しプレミアムが付いていることから、買い引き合いは活発化しているようだ。ところが問題はインド。11月8日だから米大統領選挙投票日だが、インドでは夜の8時に突如モディ首相がテレビで高額紙幣の500ルピー(800円)と1000ルピー(1600円)札の廃止をわずか4時間後の9日午前0時から発効すると発表(「今夜、法定通貨としての地位を失う」)。保有している該当紙幣は、年内に銀行に預けるか、交換しないといわば紙切れ状態となることになった。

アングラマネーと偽造紙幣の炙り出しが目的だが、交換する紙幣が十分に供給されていない紙幣不足と、それでいながら様々なものの売買がキャッシュでなされて来た慣習から、日常生活の現場も混乱状態が伝えられている。ホンダのバイクの販売の7割が現金決済と出ていたが、そのために11月は25%の販売減少となったと。現金決済が多いのが地金感覚で買われる宝飾品で、販売量が8割減ったとされる。より正確なデータが出るにはもう少し時間が掛るが、これが実態だと思われる。インドは10月下旬から金の需要期に入っているが、ドル高のおありでインドルピーも過去最安値に沈んでおり、この点と紙幣交換騒動の中で金の販売量は大きく落ちているようだ。つまり、ドル建て価格の値下がり時に期待されている実需の下支えが手薄になっていることも、この一両日の金の下げにつながっている。需要が先送りされているイメージだ。

ちなみにインド国民で普通預金口座を持っているのは、人口の4割に過ぎないとされる。キャッシュ至上主義にあってキャッシュが不足となると、これは麻痺以外ない。

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