亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

「危機対応の終息を宣言した節目のFOMC、金市場はECB待ち」

2018年06月14日 21時05分21秒 | 金市場

注目のFOMC(連邦公開市場委員会)は、予想通り0.25%の政策金利の引き上げを決めた。
年内の利上げ回数も市場が読んだように(めでたく(^^))3回から4回に引上げられ、現況の判断も強気で、伝えられているように「タカ派」的な内容となった。

金利水準は引き上げ着手から2年半かけて、やっと2%乗せという印象。総じて決定内容には、前回5月の会合の議事録(5月23日発表)や地区連銀総裁やFRB理事など、このところの発言内容に事前情報がちりばめられていたことから、サプライズはなかった。

個人的には、参加者15人による経済見通しの分布(ドットチャート)から、ある種の利上げ打ち止め感を示唆する可能性を考えていたが、それは見られなかった。しかし、一方で市場が気に掛けた年内の利上げ回数だが、3月時点の計3回から4回に引き上がったものの、年内の追加利上げを1回とみる参加者が5人、ゼロ回が2名も存在していた。3月時点で年内に3回を予想していた参加者のうち1名が4回に変更したことで、中央値が4回に移動したもので、利上げに対し金市場が予想したほどには前のめりになっていないといえる。本当にタカ派なのか?という感じだ。

声明文から、「当面、政策金利は長期的均衡水準を下回る」との文言がそっくり削除された。“景気刺激に向けて金利を十分に低い水準にとどめる”と確約するもので、当面の政策方針を示す「フォワード・ガイダンス」と呼ばれる部分。心理面でも景気の底支えを意図したものであり、削除は、いまや必要なしとの判断をしたものと思われる。実際にパウエル議長も記者会見にて、「米国経済は非常に良好」と自信満々に見えた。文言の削除は、ここまで9年に渡る景気拡大を受け、これまでの危機対応の終息を宣言したものと受け止めている。そうした点で、(昨日の表題にしたように)今回は節目のFOMCといえるのではと思う。

もうひとつ、来年1月からすべてのFOMCで議長の記者会見を行うことが発表された。この年末から来年は、長短金利の上昇や接近あるいは逆転など金融政策上も難しいバランスを求められる期間に入るとみられ、市場との意思疎通を密にする必要ありとの判断だろう。

結果に対する金市場の反応は、穏やかなものになっている。利上げ回数の増加も、わずかなバランスで3回から4回になったものだったこともあり無反応。いわゆる“材料出尽くし” とされる状態といえる。金市場は、インフレ率が2%を超え多少上振れしてもFRBが容認するスタンスを示したことも、好感ということだろう。タカ派と受け止められる内容にもかかわらず、金が下げなかったのはそういうこと。しかし、上げもしていない。上げていないのは、ショートカバーが入っていないことによると思うが、それは今夜のECB理事会と、その後のドラギ発言によると思われる。こちらもタカ派的な内容になるならば、金は目立って戻りに入ると思われるが。

今回のFOMC全体の印象は、フォワード・ガイダンスも外し景気見通しに強気ではあるものの、一方で景気拡大の終盤を意識しつつ、利上げには慎重姿勢。今後は臨機応変に対応というもの。


本日は、夕刻6時からのラジオNIKKEIの生放送「マーケット・トレンド」出演。以上のような内容を話してまいりました。

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