亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

悲観的見通しが広がる市場、メタルの下げを加速・拡大させたモメンタム投資

2018年08月16日 14時01分14秒 | 金市場

8月15日のNY市場の金価格は大幅反落となった。トルコ政府が一部の米国製品に対する報復的な追加関税を課すと発表。このところの米国とトルコ間の対立激化により広がった新興国通貨の下落が、そのまま新興国経済の先行きへの懸念に焼き直され、その筆頭国たる中国経済への懸念が再燃することになった。

折しも15日に発表された中国のインターネットサービス大手の「テンセント」の4-6月期決算が約13年ぶりに減益となったことが、中国経済への懸念をさらに高めた。IT(情報技術)分野は、いわば成長の頼みの綱。そのトップランナーの一角の減益決算は、投資家センチメントを冷やすことになった。足元で発表されている中国の経済指標にも減速を示すものが増えていることもあり、市場の警戒感は15日の市場では、商品相場の総売りとして表れることになった。

中国政府が下半期に向けて、景気刺激策を取る意向を示したことから、一時反発機運が高まった商品市場だったが、この日は中国に限らず新興国全体の問題、すなわち世界経済の先行きへの懸念にまで広がることになった。原油、天然ガスからメタル、小麦やコーヒーなど農産物まで全面安状態となったことから、代表的な商品指数であるロイター・コア・コモディティCRB指数は、186.94と前日比3.49ポイントの大幅安状態で一気に2017年12月19日以来の水準に低下することに。世界景気の減速懸念にもっとも敏感に反応する産業用を中心にメタル相場も全面安状態となった。

15日の金価格は、ロンドンの時間帯までは1200ドル近辺での推移となったが、NY時間の早朝に対ドルでのユーロ安が進んだことから、ドル指数が急伸し、一気に97ポイントに迫ったこともあり、売りが膨らむことに。その後は、商品市況総崩れの中で金は、もっぱらこのドルの上昇を手掛かりに売られることになった。悲観的見通しが広がる市場では、新興国中銀の中には通貨防衛からのドル調達を目的に金売却に走っているとの噂まで流れる状況にある。

こうした中で、NYコメックスの通常取引は、前日比15.70ドル安の1185.00ドルで終了となった。2017年1月9日以来1年7ヵ月ぶりの水準となる。金市場に限った話ではないが、加速する値動きに乗って利益を上げようとする「モメンタム投資」の手法を取るファンド(投機筋)の動きが、値動きを荒くしていると思われる。この日のNY市場の銀相場は、14.4540ドルと15ドル割れで終了。同じくプラチナは771.90ドル、前日比29.80ドル安、パラジウムは837.20ドル、同52.80ドルとそれぞれ大幅安で終了となった。プラチナの安値は756.60ドルで、リーマンショック後の2008年10月以来の低水準となる。

トルコと米国間の関係悪化が報復関税の導入に至ったことが、米中貿易戦争に対する懸念を再燃させ、さらに世界経済の悲観的見通しに拡大している。市場センチメントの悪化に乗じた流れに乗るモメンタム系ファンド。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “夜明け前が一番暗い”のか、“... | トップ | 誰が、さらに売り乗せるのか »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

金市場」カテゴリの最新記事