亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

金市場から撤退してる「売り方」のファンド

2018年12月11日 17時49分32秒 | 金市場

英国のメイ政権が議会下院で11日に予定していたEU(欧州連合)離脱合意案の採択の延期を表明したことから、英ポンドが全面安となり、それにともなったドル高が金市場では売りを誘った。英ポンドは対ドルで年初来安値を更新し2017年4月以来1年8ヵ月ぶりの安値に沈み、ユーロはフランスのマクロン政権が増税策に端を発した国内の抗議運動への対応に苦慮するなど政治リスクが重しになり対ドルで売られた。一方で、欧州政治リスクの高まり、とりわけ英国のEU離脱騒動は、時間切れが迫る中で展開次第では金融波乱につながる可能性は無視できず、金のサポート要因でもある。

10日のドル指数(DXY)が終値で97.21と11月12日の年初来高値に接近する水準まで上昇していることを考えると、前日比3ドル程度の下げで踏みとどまった金は、ドル高に対する耐性を感じさせるものといえる。金融環境を見る上で、それだけリスク要因が増えているということか。

ちなみに、ブッシュ元41代米大統領(父ブッシュ)の国葬の関係で公表が遅れていたCFTC(米商品先物取引委員会)のデータが10日に発表された。やはり1250ドル超への上昇の背景には、たまっていたショート(空売り)の買戻し(ショート・カバー)が進んだことがあった。NY金先物12月4日時点でのファンドのショートは(オプション取引を除く重量換算で)前週比96トンの減少で385トンに低下。一方、買い建て(ロング)は50トン増加したことで、ネットの買い越しは152トン(ネットロング)に増加となっていた。いわゆるフレッシュ・ロングと呼ばれる新規買いが少しまとまって増えたことは注目に値するが、「取組」と呼ばれる未決済取引残高が約10%減っていることから、ここまでの上昇はもっぱらショート・カバーによるもので、端的には先安観測からショートを持っていたファンドが撤退(買戻し手仕舞い)していることを表している。取組の増加を伴ったロングの広がりが、本格的な上昇につながりやすい。

先週末に発表された11月の米雇用統計は、全般的には好調を維持しているといえた。ただし、これまで拡大基調を想定していた市場の期待値からすると、見劣りするものと映ったようだ。


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