亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

“ITバブルの仕上げ”につながった1990年代末を思い出してしまう

2019年07月17日 20時30分59秒 | 徒然(つれづれ)
16日はWTIなど原油価格が急落した。イラン側が話し合いに応じる用意があると米国に表明したとのポンペオ(国務長官)発言が伝えられ、緊張緩和が売り材料とされる。イランとの協議に大きな進展があったとのトランプ発言があったとも伝えられた。イラン情勢については、米国、イラン双方、とりわけ米国サイドに戦争をしたい向きはいるのは確かだろう。あるいはイスラエルのように利害関係者の中にも戦争を目論む動きはある。盛んにきっかけ作りに励んでいるのは、ここまでの展開を見ての通り。

しかし、米国にとって対中通商交渉が難航していることに加え、南シナ海や台湾問題など(いずれ)軍事的緊張の高まりすら否定できない状況の中で、イランとの間で戦端を切るのは無理があると思われる。したがって、イランに絡む中東情勢は、金市場を見るにあたっては側面というか派生的な材料と捉えている。メインではない。

もちろん前にも書いたが、必ずしも合理的判断を下さないのが政治の世界ゆえに、交戦状態には至らないとは言えないものの、いまはイランまで手を広げたくないと思われる。先月末だったか、やっても短期だ!というようなことを合衆国大統領が口が滑ったというか、発言していたと記憶しているが、本音だと思う。

さて注目の6月の米小売売上高は、やや減速を読んだ予想より良かった。全体から自動車やガソリン、建材、食品サービスを除いたコア売上高は、国内総生産(GDP)の消費支出にもっとも近いとされるが、前月比0.7%増だった。5月の数字も当初の0.4%増から0.6%増に上方修正された。4月以降好調で4-6月期に個人消費が加速した可能性がある。つまりGDPの押し上げ要因となる。この結果を受け、地区連銀のひとつアトランタ連銀が発表しているGDP予測(GDP Now)はこの日、4-6月期の見通しをこれまでの1.4%成長から1.6%成長に上方修正している。

こうした結果を見ると、FOMCメンバーに少なからず存在する「利下げの必要なし」との意見にも納得できるが、16日にパリで講演したパウエルFRB議長は、「物価停滞が長引くことに懸念を強めている」として、月末の会合での利下げを改めて示唆した。いまや後戻りできない状況につき、“予防的利下げ”なる聞きなれない表現まで生まれている。これはこれで、何やら2000年問題でコンピューターが誤作動を起こし、混乱を招く可能性を考えて通貨供給を増やし、それが“ITバブルの仕上げ”につながった1990年代末を思い出してしまう。神様、仏様、グリーンスパン様の時代の話。
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