亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

急な調整局面入りの米国株式、備えとしての金保有

2020年02月28日 16時17分46秒 | 金市場
本日は、まず午前中に他で書いた原稿を参考までにアップしておきましょう。
夜に時間を見てアップする予定。

新型コロナウイルスの感染拡大が続き世界的に警戒感が高まる中で、米国内でも感染拡大が懸念される事例が表面化。すでに下げ基調を鮮明にしていた米国株式市場が再び全面安状態となる中で、いったんは上値追いとなった金だったが、終盤に利益確定売りが出て前日とほぼ同じ水準で取引を終了した。NYコメックスの通常取引は、前日比0.60ドル安の1642.50ドルで取引を終了した。

この日の金市場は、アジアからロンドンの時間帯を通してプラス圏の1650ドル超で推移。(管理相場と目される中国市場を除き)アジアから欧州と株式全面安のリスクオフ環境の中で、金は堅調に推移。同じ時間帯に(NY時間外取引の)米10年債相場は水準を切り上げ利回りの低下が続いた。この時間からすでに連日の過去最低利回りを更新する展開に。アジアの午前にトランプ政権がペンス副大統領をトップとする新型コロナウイルス対応のタスクフォースの設置を発表。記者会見でトランプ大統領は「米国人へのリスクは極めて低いままだ」とし「どのような事態にでも完璧に対応する」とした。その後、米疾病対策センター(CDC)がカリフォルニア州で海外への渡航歴がなく感染経路不明の患者発生を発表。このアジア株から欧州株への株安連鎖は、このニュースに反応したものとみられた。

同時に(先に触れたように)安全資産としての米国債への買いが膨らんだのは、市場規模(流動性)から大量の逃避マネーの受け皿になることが、大きな要素といえる。この規模の点で見劣りする金市場は、急騰相場一巡後の売り先行状態ということも手伝い上値は重かった。それでもNYの通常取引開始後に、株式市場全面安状態を受けて買いが優勢となり1660ドルを突破することに。ただし1662.50ドルまでで、その後は終盤に向け売りが優勢となり上げ幅を削りながら進行しほぼ前日の終値で終了。

米国株式市場は急落という面で記録的な下げとなっている。NYダウの1190ドル安は1日としては過去最大の下げとなる。12日に付けた終値ベースの最高値を12.8%下回る水準となり「直近高値から10%を超える下げ」が定義とされる調整局面入りに。前日は反発していたナスダックも19日の終値ベースでの最高値から12.7%の下げ。S&P500種も同じ19日から12%の下げだが、高値から6営業日での調整局面入りは過去最短となるもの。

新型コロナウイルスといっても、震源地の中国は地理的に遠く、欧州や日本その他アジア諸国に比べて比較的中国への依存度は低いことから、米国への影響は薄いとの判断が米国株式市場にあったのは事実で、それゆえ直前まで過去最高値の更新を続けてきた。その上昇に市場関係者の多くが急落のリスクを感じ取り、それゆえ昨秋以降の極端なリスクオンの株高の中で金が買われてきた。暴落状態となった株安に対応した金保有は功を奏し、足元で利益確定の売りに傾き、金は上値の重い展開となっている。

なお、この日発表された2019年10-12月期GDP改定値は、速報値と同じ年率換算前期比2.1%の増加と市場予想に沿ったものだった。ただし内訳の中で、前の期の3.2%増から1.8%増に鈍化し注目された個人消費が、今回1.7%増にさらに下方修正されたことは要注目と思われる。この先、新型コロナウイルス問題が広がるならば、ここまで米国経済をけん引してきた個人消費への影響が懸念されそうだ。
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1 コメント

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個人消費の下方修正 (ささやか)
2020-03-01 06:55:21
関税引き上げ、消費税引き上げ、いずれも仕組み的には最終消費者の負担になるものと思います。収入増加が見込まれないと個人消費は落ち込むのが当然と思う。
中銀の金利引き上げ難しいのでしょうか?

飛行機、船舶などで、人もモノも大量高速で移動できる今この時代、米中は距離が離れているからウイルスから無事に済むなんて心底から思うファンドマネージャー少ない気がする。

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