亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

混乱は想定より長引き「MMTクラブ」が発足する

2020年03月27日 23時27分38秒 | 金市場
新型コロナ対応の副作用でもある経済活動の急収縮。それがどの程度のものかを具体的な数字で示すわかりやすいデータとして注目された米週間ベースの失業保険新規申請者件数。

先週時点で全米各地の受け付け窓口が申請者の激増で混乱が伝えられていたこともあり、悪化が予想されていたものの、それ以上の悪い数字が出るとの一定の予見が市場にはあった。それでも150万とか170万件だった。この数字でも激増といえる。結果は広く報じられたように328万3000件というものだった。現在のような方式での、これまでの最大は1982年10月の69万5000件というのだから、悪化の程度(マグニチュード)がわかろう。もっとも、全米でほぼ同時期に一斉に制限を掛けたのだから急収縮は当たり前で、申請件数の急増は始まったばかりで、しばらく驚きの数字が登場することになりそうだ。時間差を置いて失業率の急伸ということになる。

米国経済は雇用の堅調さが個人消費を支え、設備投資の長期低迷をカバーする構図が続いてきたが、その個人消費がこういう形で崩壊することになったのだから、放置すると恐慌に転じかねない事態といえる。なんせ世界中が温度差なく同じ状況なのだから。何度も書くように、それぞれ正しい対応をしているのだが、その正しい対応を世界全体で一斉に取っていることで未曽有の問題発生に至っている「合成の誤謬」の嵐の真っただ中に我々は居るわけだ。

疫病の感染拡大という社会的混乱の金融経済への影響は、こういう出方をするんだということは、一定の想定はあったものの、「同時多発」の威力は予想をはるかに超えるものとなっている。当然ながら対応策は未曽有な規模となる。当初金額規模で1兆ドルとしていた米国も、とても足りない、ならば2兆ドルに倍増し議会もこれを承認した。した、というよりしないわけにはいかない。

しかし、これとてカネを配ってもそれをフルに使える環境が整わないと効果はない。26日のCNBCのTVインタビューでパウエルFRB議長も言っていたが、経済活動の完全な再開は新型コロナウイルスの制御にかかっているわけで、これは時間との勝負でもある。日本もその例に漏れないが、当初はどこの国もそれほど事態は長引かないと思っていたし、それなりの活動自粛をすれば済むと思っていた。それが、どうやら甘かったのではないかということになりつつある。今夜、NHKのニュースに京大の山中教授がインタビューで出ていて、1年は続くのではないかと言っていた。もっと警戒しましょうよと。そう思い対応し半年で済めばいいじゃないかと。

思うに社会生活は感染の一巡が見えてくると、急速に回復すると思う。しかし、世界中でこれだけ金融市場の混乱があったわけで、金融経済の修復には早くて年内いっぱいはかかるのではないか。そうこうしているうちに、米国にしても2兆ドルの予算では足りなくなり、追加の予算を組まねばならない事態もありそうだ。巨額の国債を世界中で同時多発的に発行するとなると、だれが買う?すでに禁じ手の領域に我らが日本銀行は入っているが、FRBはじめ続々と仲間に加わり、気が付けば「MMTクラブ」が自然発生的に発足しているのではないか。MMTとは昨年話題になった「近代貨幣理論」の英語表記の略で、通貨を発行する国家の財政赤字が膨らんでも支障はないとする考え方だ。

先週19日のラジオNIKKEIの生放送「マーケット・トレンド」に出たとき、最後に、ちょうどNY金が押し目を作っていたタイミングだったが、「円建て5000円近辺の金は買いだと思います」とした(2020年3月19日放送、ラジオNIKKEIマーケット・トレンド)。自分としては、現物で持つならば6500円以下の金は買いと思っている。

本日はFRBの資産が短期間でこれまた未曽有の増加となっていることを書こうと思っていたが、いずれまた。官製相場の日本株は今日も高かったが、大丈夫なのか。。。というか、大丈夫と思えない。
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