亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

リーマンショックを超え大恐慌阻止という次元 

2020年03月30日 21時17分00秒 | 金融市場の話題
「志村けんさん死去」。都内の感染拡大情報でも流れるのではないかと、たまたま見た午前11時のNHKニュースで流れていたのがこの話だった。朝からPCの前に座っていたが、ニュースは流れていなかったと思う。驚くのは発症からの病状の進行の速さ。改めてこれは未知のウイルスなのだと思った。タイガースの藤浪投手が味覚異常とか言い出し、それから嗅覚異常も含めいろいろ報道され、通常のインフルでもそうした症状があるとのことだが、正しい情報の取捨選択はむずかしい。一部で新型コロナは怖くないんだ特に若者は、とか宣い、そうした話を拡散している輩もいるやに聞くが、混乱に乗じて自分に耳目を集めようとする試みには要注意。仮に若者自身は大丈夫でも、スプレッダー(拡散者)になるというのは本当だろう。

さて進行の速さというと金融市場もそうで、先週末にここでFRBの資産拡大のピッチの速さについて書こうと思ったが、いずれとした。

27日に日経などで取り上げられたが、FRBの資産が初めて5兆ドルを突破した。毎週木曜日にFRBはサイトで前日の資産状況の公表を行っていて、直近は3月25日付のデータが公開された。それによると5兆2542憶ドルとなっていた。驚くべきは、1週間前つまり18日との比較で5860憶ドル(約63兆円)も増えていたこと。1週間の増加としては過去最大となる。それだけドルが供給されたことになる。表現を変えればそれだけドルが必要とされていたことになる。

「燎原の火」という表現があるが、世界経済の同時多発的急収縮の中で想定をはるかに超えるスピードで進行する危機。対するFRBによる今月3日以降の矢継ぎ早の対応策の発表は、危機感の高まりよりも、むしろ狼狽ぶりを表すような展開となっている。

まずFRBは3月3日に0.5%の緊急利下げに踏み切る。さらに3月17・18日に予定していた米連邦公開市場委員会(FOMC)を15日日曜日夕刻という異例の日程で前倒しに開催。1.0%もの大幅利下げを行い、ゼロ金利政策を復活させ、さらに米国債などを数週間で7000憶ドルをメドに買い取る量的緩和策(QE)の再開も決めた。翌16日には、主要6中銀(FRB、欧州中銀、日銀、イングランド銀行、カナダ銀行、スイス国立銀行)間にてドル資金を融通し合う協定を発表。リーマンショック時に採用した協定を復活させた。翌17日には企業の資金繰りをサポートするとして、FRBが(実質的に)直接コマーシャルペーパー(CP)の買い取りに乗り出すことを発表。翌、18日にはマネーマーケットファンド(MMF)への直接関与も発表。市場を驚かせたのは、この政策発表が現地ワシントン時間の午後11時半に行われたことだった。

その後も政策の拡大策は次々に打ち出され、買取りにABS(資産担保証券)を加えたり23日には資産買い付けを(数週間で)7000憶ドルから無制限に切り替えた。実は25日までの2週間で9423憶ドル(約102兆円)の買い付けを行っており、7000憶ドルの当初枠が瞬間蒸発に近い状況だったのが判明したのが26日だった。なるほど「必要とされるだけ」としたわけだ。。。。

27日には米国議会が総額2兆2000億ドル(約220兆円)の大型経済対策を可決。同法案にはFRBに対し最大4250憶ドルの「政府保証」を付与することも盛り込まれている。これでFRBは一般社債(非金融法人)の買取りに乗り出すことになった。新たに4兆ドル(約430兆円)規模の資金枠を確保し社債の買い取りに入るとされる。仮に10%の損失が出ても、連邦政府が負担し中銀であるFRBに類は及ばない。いずれにしても、FRBが直接企業を支援することになる。驚くべきは、一般事業会社にFRBが融資するルートも開かれたことだ。市中の金融機関を通さずFRBが融資!? もちろん特別目的会社など通し、どの企業に融資するかなど委託するのだろうが、矢継ぎ早の対応はさすが!!ということだが、それだけヤバイ状況にあるといえる。

事態はリーマンショックを超え、大恐慌阻止という次元の対応策となっている。個別には、石油産業を守りたいというホワイトハウスの意向も働いていそうだが。今週もマーケットは騒がしい1週間になりそうだ。


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