亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

ファンドが期末で金ポジション整理 ロシア中銀買い中断

2020年04月01日 20時12分47秒 | 金市場
昨日はNY金が大きく売られ4営業日続落で1600ドル割れとなった。アジア時間に発表された3月の中国PMI(製造業購買担当者景況指数)改善や米国の消費者信頼感指数が予想より悪化の幅が小さかったことなどが下げの背景として指摘されていたが、月末、四半期末で先物市場でのファンドのポジション整理が下げにつながったと思われる。NY金もこのところ乱高下が激しくなったことで、取引を控える動きが伝えられている。このところの株式市場はじめとする暴落相場の中で、傷んだファンドも多いとみられ、いったん手仕舞いということだろう。売りが一巡すると収まる類の動きと思う。

3月の中国PMIは、過去最低となった2月の35.7から52.0へと16.3ポイントの上昇し、拡大・縮小の境目となる50を3カ月ぶりに上回った。急回復には疑問の声もあるが、2月の劇的な落ち込みに対するリバウンドが実態以上に数値を押し上げたとされる。中国当局も「企業の生産や経営が新型コロナ前の水準に戻ったことを意味しない」と言い訳のような声明を出したが、声明を出すこと自体が異例とされるので勘繰りたくもなろう。作られた数字ではないかと。新型コロナ感染者数についても、先週香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)が、2月末時点で中国の新型コロナ感染者4万3000人以上が、「無症状」を理由に感染者の統計から除外されていたことをすっぱ抜いて話題になった。それが本日4月1日から無症状でも感染者として発表するとされる。どんな数字になるのだろうか。チャイナ・スタンダードの下で公表される数字には疑念が付きまとう。

市場への安心感という点では、この日、FRBが海外の中央銀行にドル資金を供給する措置を発表したことに勝るものはないだろう。FRBは、海外の中央銀行が保有する米国債を利用して翌日物のドル資金の調達を可能にすると発表。主要中銀6行間でドルの供給協定を先行して結んでいたが、新興国中銀を含めFRBが直接ドル供給の道を開いたことを意味する。ドル建て債務が膨らんでいる新興国にとっては、急場をしのぐ資金が手持ちの米国債をNY連銀に一時売却することで、ドルキャッシュが調達できることになる。今週中にスタートし、当面6カ月間の時限政策となる。

緊急的な措置とはいえ米国債を持っていればFRBから直接資金供給を受けられるとなると、今後、米財政赤字が急拡大する、つまり国債発行残高が急増する中で、新興国中銀に対し米国債保有のインセンティブを示す効果もあろう。

昨日は更新できなかったが、ロシア中銀は3月31日、今月以降の金の買い付けを見合わせる可能性ありと発表した。過去10年にわたって金市場では新興国中銀が大きな買い手として存在感を高めてきた。その最大の買い手がロシア中銀だった。外貨準備に占める金の比率を高めると宣言したのは2007年のこと。まだフランス中銀などが金より利息が得られる米国債の方がいいと売却に走っていた時期のこと(サルコジ元大統領が金売りを進めた)。掲げた目標は外貨準備の10%というもの。それから毎月のように金を買い続け、足元で保有量は2279トンにもなった。ちなみに2006年末は409トンにすぎなかった。1870トンも増やしたことになる。今回、買い付け中断の理由は示していない。ただ、3月以降の原油価格の暴落の影響があるのは間違いなかろう。外貨準備に占める金の比率も20.6%と、目標を大きく超えていることもある。市場関係者の中には、ロシア中銀が金を売っているとの見方をする向きがいるが、現時点で憶測にすぎず確認はされていない。ただ、動向は注視している。

ところで新型コロナ感染拡大の影響で、ロンドンやNYへの地金の移送に障害が出ているが、対応策が進められている。
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