亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米中関係悪化観測から金は続伸

2020年05月31日 18時27分26秒 | 金市場
先週末5月29日のNY市場の金価格は続伸となった。前の日に中国の全国人民代表大会(全人代、今回に相当)が、香港の統制を強化する「国家安全法」の導入方針を採択。これに対し「一国二制度」を謳った英中宣言に違反するとして、トランプ大統領による対中制裁の発動が予定されていたことから、この日の金市場はアジアからロンドンの時間帯を通してプラス圏で推移。NYの通常取引入り以降は、発表された米国指標が予想以上に悪かったこともあり、水準を切り上げながら進行。午後遅くに予定されているトランプ大統領の会見に向け、市場では新たな関税や制裁、第1段階の米中合意の撤回などに踏み切るなど米中間の緊張が一気に高まるとの見方から、金は6営業日ぶりに1750ドル台で取引を終了することになった。終値は1751.70ドル、前日比23.40ドルとなる。5月は月間ベースで3.4%の上昇。年初来では15%の上昇となる。

予定より遅れてホワイトハウスで記者会見したトランプ大統領は、中国が「一国二制度」を「一国一制度」に置き換えたと批判。香港に対して認めていた優遇措置の廃止に向けた手続きに入るとした。現在は香港オリジンの商品に対しては米国が中国に課している制裁関税は適用されず、香港市民は米国のビザ(査証)の取得なども優遇されている。併せて世界保健機関(WHO)から脱退する意向も発表された。ただし、市場が恐れた第1段階の通商合意の破棄など、ここまでの両国の交渉事項などには触れなかったことから、市場には一定の安心感が広がり記者会見の直前には前日比300ドル以上売られていたNYダウは、一気に買い戻されプラス圏に浮上、小幅安で取引を終了。時間外の取引に移行していたNY金は上げ幅を削り1743ドルで週末の取引を終えた。両国間の貿易や金融取引は大きく、米国内でも業界横断的に慎重な意見も多く、配慮したもよう。今後の経過に対する中国側の反応に市場の関心は向けられる。

米国関連の経済指標は、「統計開始以来最悪」とされる内容が続いている。3月に前月比6.9%減と過去最大の落ち込みとなった個人消費支出だが、4月は13.6%減とさらに落ち込みが大きくなった。1959年の統計開始以降で最大の落ち込みということに。都市封鎖ゆえの当然の結果とはいえ、米国経済(GDP)の7割近くを占める個人消費の空前の落ち込みは、4-6月期が大恐慌以来最大の落ち込みになる可能性を示す。ちなみに市場予想は12.6%の減少となっていた。米連邦準備理事会(FRB)が物価の目安としている、前年同月比のコア個人消費支出(PCE)価格指数は1.0%の上昇で、2010年12月以降で最低となった。

なお先週末にドイツのメルケル首相が不参加を表明し注目された主要7カ国首脳会議(G7サミット)だが、結局、トランプ大統領は秋に延期する方針を発表した。
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