亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

金市場の下げ要因としてのIMF保有金売却案

2020年06月01日 22時49分01秒 | 金市場
欧米諸国や日本などが新型コロナ感染拡大抑制に一定のメドが立ったということで、行動制限の解除に向かう中で、インドや南アなど新興国も解除を発表している。しかし、新興国は感染拡大の沈静化に程遠く、解除には無理があるのが実情だ。それでも解除しないと人々の暮らしが持たない。つまり感染しなくとも経済封鎖によって、食べ物にも事欠く人々が多くいることから、「命」も大事だが「暮らし」も守らねばならなくなっている。支援する政府自体に余裕がないことも、解除を急ぐ背景となっている。

世界中が例外なく苦しむ新型コロナ禍に在って、主要国金融市場の混乱の中で新興国に投じられていた資金が潮が引くように一斉に逆流を始めたのが3月のこと。3月に過去最大を記録したが、その後も断続的に流出が続き、新興国通貨は対ドルベースで軒並み過去最安値を更新した。記録的資金流出は、過去10年ほどで投資マネーが流入した反動という面も強いとされる。国際金融協会(IIF)によると、流出ペースはリーマン・ショック時の約4倍に達したとされる。こうした中で社会基盤が揺らぐ国も増え、100カ国以上もが国際通貨基金(IMF)に支援を求めているとされる。

こうなると気になるのがIMFの財源だ。果たしてIMFはそれに応えることができるのだろうか。金市場からの視点ということでは、今後のIMFの財源問題が気になるところだ。なぜならIMFは金を大量保有する国際機関であり、過去に売却した経緯があるからだ。

IMFは2020年4月時点で2814トンの金を保有している。米国、ドイツに次いで3位に位置する大量保有機関でもある。なにゆえ大量に金を保有しているのか。それは設立された時代が、金=通貨の時代で加盟国の出資金の25%が金で支払われたことによる。さらにその後の増資にも金が使われた。実は、リーマンショック時にIMFは貧困国救済の資金調達のために403トンの金を売却した経緯がある。それだけに、新興国危機の状況によっては、売却に向けた話が出てもおかしくないだろう。出た場合には、一過性にしても金市場は売り要因と捉えるのかも知れない。ただし思うのは、各国中央銀行の間で金準備増加意向が引き続き強いこと。さらに欧米個人を含め金需要が強いことから、市場で吸収される可能性が高いのではということ。もちろん量と売り方に左右されるが、金市場に影響を与えない方策を考えるのが、過去20年間の金市場でのジェントルマン・アグリーメント(紳士協定)となっている。したがって、売却の話が持ち上がっても、下げは限定的と思われる。

そもそもIMFの資産売却認可のバーは高く、加盟国の85%以上の賛成を必要とする。そして米国が17%を少し超える投票権を持っている。つまり米国が承認しないと売却もできない。

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