亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

続・下げ要因としてのIMF保有金売却案

2020年06月02日 21時18分47秒 | 金市場
昨日のIMF保有金の話の続きから始めよう。リーマンショック時にIMFは重債務貧困国救済の資金調達のために403トンの金を売却した経緯があるとしたが具体的には以下のような経緯だった。

発足間もないオバマ政権にあって、直前までFRB傘下のNY連銀のティモシー・ガイトナー前総裁が財務長官に就いていた。2009年3月に同長官が米国議会にIMF保有金の利用を促す提言をし、最終的に6月に議会にて売却は承認された。売却案は慎重に進められ(各国に根回し)、IMFは9月の年次総会に際して開いた理事会で403トン(1297万オンス)の売却を承認した。

IMFの売却は慎重に行われた。まず第一段階として金購入に関心がある中央銀行や国際機関に対する声掛けが内々に行われた。なるべく市場売却せず、公的機関同士の売却を市場外取引で行うことで、影響を抑えようとの配慮だった。つまりクロスを振ろうというわけだ。

結果的に市場はポジティブ・サプライズに覆われることになった。

この年の11月初め、IMFは緊急声明を発表。403トンの売却予定の金の半分にあたる200トンを、インド中央銀行が購入したことを公表。インドの買いがサプライズだったのは、そもそも同国は経常収支が赤字の国だったからだ。インド中銀の買いは、金購入に前向きな中央銀行のスタンスを市場に印象付けるに十分だった。この年はその後もモーリシャス2トン(11月16日)、スリランカ10トン(11月23日)と購入が続いた。量的には見劣りするものの、当時金価格は過去最高値を更新中であり、その中で時価での購入は市場参加者とくにファンドを刺激することになった。

ただし中銀による直接購入はここまでだった。残りの191トンについては、翌2010年に入り市場に影響を与えないよう、毎月一定量が分散して売却され静かに市場に吸収され12月には全量を売り切ることになった。この時は、現在のようにFRBが大規模な量的緩和策に踏み切っており、世界的に金保有に対し関心が高まっていたこともプラスに働いた。

今回の危機にあって、同様の売却話が出たとして、やはり市場すなわち金価格に影響の少ない方法を取ると思われることから、ジェントルマン・アグリーメントが存在すると昨日書いた。つまり、売却話が出て下げる局面があっても(他のネガティブ要因がなければ)一過性に終わると思われる。

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