亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金とドル指数が映す「後から来て追い越していった」FRB

2020年09月11日 20時50分59秒 | 金市場
今来週と主要中央銀行の政策決定会合が予定されているが、まず11日の欧州中銀(ECB)の定例理事会からスタートした。もとより政策変更は予想されておらず、結果もその通り、政策金利の据え置きと大規模な金融緩和策の維持を決めた。ECBというと問題はこのところの対ドルでのユーロ高。米連邦準備理事会(FRB)が、この先2%を超えるインフレがあっても、下回っていた期間を考慮して利上げは当面見送ると8月末に政策スタンスの変更を発表。それ以来、対ユーロでドルが売られた。そして急伸したユーロ相場に関するECB高官の発言が注目されてきた。

以前から輸出依存型のユーロ圏経済ゆえに、ユーロ高が続くとECB関係者からけん制発言が見られていた。ただ今回は、8月のユーロ圏のインフレ率(速報値)が前年比マイナス0.2%と、0.2%上昇予想に対し予想外の低下となったことがある。前年比での低下は、2016年5月以来のことで、新型コロナ禍で経済の下振れが激しかったこの春にも見られなかった。通貨高は輸入物価を押し下げ、物価上昇を抑える。先週初めにはレーンECB専務がユーロ高を牽制する発言が伝えられていたが、自然消滅していた。

昨日の理事会後の記者会見でのラガルド総裁の発言、とりわけユーロの水準についてのコメントはメディアにより受け止め方に温度差がある。たとえば日経は、「ユーロ高を牽制」として「ユーロ高への警戒を繰り返し表明し『理事会でまさに幅広く議論された』と語った」としている。一方、ロイターは、「ユーロを注意深く見守っているとしながらも『為替レートを目標にしているわけではない』と強調した」として、「ユーロの上昇は経済ファンダメンタルズとおおむね整合的と判断」と報じている。

大勢的に捉えるならば、次のような感じだろう。

ECBと日銀(BOJ)はデフレ回避やデフレからの脱却を掲げて、早くから緩和策を取ってきた挙句にマイナス金利の導入にまで追い込まれ、中銀の政策限界まで指摘されていたことがまず前提にある。そこに金融政策では、この2行に比べ追い込まれていなかったFRBだったが、資産バブルのコントロールに苦労する中で発生した新型コロナ禍で、一気にゼロ金利の復活に加え大量の資産買取り(通貨供給)の必要が生じてしまい、結果的にECB、BOJに急接近することになった。それはあたかも、「後から来て追い越していった」規模感であり、この政策転換の方向性が示すのはドル安ということだと思う。

以前も書いたが、自分は発生する事象を相場の材料として捉える際に、むかしむかし大昔(笑)に数学で習ったベクトルをイメージしている。以前からあったユーロ安ベクトルや円安ベクトルを上回るドル安ベクトルが出現しているわけだ。ECBとてこの大きな流れに抗えないのではないかと思う。もっとも、我らが感じないユーロ安、また円安ベクトルも水面下で育っている可能性があるので油断ならないのもマーケットの怖いところでも、面白いところでもあるが。

なんだか書いているうちに話が難しくなってしまった。本日午後に、ある通信社の電話取材を受けFOMCが控える来週のNY金のレンジを聞かれ、引値ベースで1930~1980ドルとし、どちらかというと1950から上の水準か・・・な、、、、とした。


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