亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

株価大幅反落の中で買われるドル、売られる金

2020年09月24日 22時28分02秒 | 金市場
1.610ドルと7月27日以来の水準まで落ちたユーロ売りに加え、ドル円まで買われた(円安)ことで、ドル指数(DXY)が94ポイント台の半ばまで急騰。この3営業日ほどで一気に水準を切り上げでおり、金市場では売りが広がった。報じられているように23日のNYコメックスの通常取引は、前日比39.20ドル安の1868.40ドルで終了。心理的な節目となる1900ドルを終値ベースで下回るのは、7月24日以来のこと。前日に週明けの急落状態から自律反発的な戻りを見せていた米国株が、この日は大幅反落となるリスクオフ流れの中での、ドル買いの反対側で金は売られた。株安に伴った益出し売りというよりも、株式自体が政治的不透明感の漂う10-12月期を前にした四半期末の現時点で益出しという動きの中で、金のポジションも手仕舞いという流れと思う。23日はテクニカル要因も重なり、結局大幅続落となった。

8月12日の取引時間中の安値1874.20ドルを下回り、当時のように引けにかけての戻しも見られず終値ベースでの1900割れは7月24日以来のこと。本日24日のアジアから足元NYの早朝まで1850ドル割れは見ていないものの、1860ドルを挟んだ安値保合いが続いている。本日はこれから、米国の週次の失業保険新規申請件数の発表が控える。来週は雇用統計週となるイベント週だが、本日の発表分がどうなるか。

NY金については1カ月半にわたり続いてきた引値ベースでの1930~1980ドルのレンジを今回割れたことで、下値のメドは上昇過程の取引状況から独自に1840ドル、1800ドルに置いている。

今週は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が22日に下院住宅サービス委員会、23日は新型コロナ対策に関する下院特別委員会でそれぞれ証言に臨んでいる。両日共に経済回復の不透明感を指摘し、議会で話し合いがこう着したままの財政支援策の必要性を訴えた。

この日は、議員との質疑応答の中で、今回の新型コロナ禍で初めて導入した中小企業向けの融資の肩代わり策(銀行融資をFRBが買取り)が、国民でなく金融市場を助けたのではないかとの質問が出た。対して議長は、「断じて、ウォール街の痛みを和らげることが狙いではない」と言明。

その後、「基本的に、われわれが考え得る措置はすべて行った」とし、「追加策も考えている」としたものの、「現在のところは大きな変更は検討していない」と発言。質疑の流れから、今回特例措置として踏み込んだ融資制度(メインストリート貸し付けプログラム)について語ったのは明らかだが、「考え得る措置はすべて行った」という部分が切り取られて伝わり、“FRBは当面何も対応策を取ることは考えていない” と解釈され株安の後押しをしたとの指摘があった。

たしかにFRBに限らず主要中銀は従来では予想もしなかった策まで講じており、政策限界も懸念されているだけに、株安の中で市場も神経質になっているとみられる。客観的には大統領選を控え、FRBも動きが取りにくくなっている。パウエル議長も議会による追加対応を促しているがその議会が、最高裁判事の欠員問題が起きたことで、追加支援法案まで手が回らない状態となっている。

なお、書いているうちに本日発表された失業保険新規申請件数は87万件と前週より4000件増えていた、4週連続で100万件を割れているものの、80万件台が4週続いており、労働市場の改善が足踏み状態になっていることを表す。新型コロナ禍に見舞われるまでは、60万件台が過去最高水準だったので、高水準の申請が続いている。

金市場内では、週初21日の大幅下落に際して残高を大きく増やした金ETFだが、この日は最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」の残高は約11トン減っていた。今週増加分の3分の1に相当するものが売られたことになる。売り買い交錯状態の金市場。
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