亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米欧中銀のせめぎ合い、NY金は2番底か

2020年10月30日 21時11分45秒 | 金市場
欧州中央銀行(ECB)の政策理事会は、想定通りの内容となった。政策変更は見送られ、12月の次回理事会での追加緩和策を示唆した。これだけ新型コロナの感染が広がり、経済への影響が避けられない中では、当然ということだろう。

ラガルド総裁は記者会見で「景気回復の勢いは想定以上の速さで失われている」として、「感染拡大、および感染拡大抑制策が経済に及ぼす影響の重大性を認識しており、次回理事会で政策措置を調整する必要があるとの見解で一致した」とした。ユーロ高によるインフレ抑制にも言及したとされる。そもそもEU(欧州連合)の消費者物価指数が8月、9月と2カ月連続でマイナス圏に沈んでいるので、ユーロ高は牽制したいのは以前からのスタンス。

一連の発言を受けてユーロドルは1.1759ドルから一時1.1650ドルと4週間ぶりの安値をつけた。ドル指数(DXY)は一時94ポイント台まで上昇し、9月28日以来の高水準となる93.93で終了。このドル高が金の戻りを抑えることになった。明けて本日ここまでの展開は、ユーロの安値は1.1662までで、DXYも93.98まで見たが93.8辺りで滞留となり、ドルは切り上げた水準を維持している。

目に留まったのは、米10年債の利回りの上昇。前日の0.7810%から一時0.8420%に急伸(価格は下落)。引けは0.835%で、本日もこの辺りの水準を滞留中となっている。短期債はそれほど動いていないので、長期債を中心に売られたことを表す。・・・・で、調べたら29日は午後に7年債、530憶ドルの入札が行われ、引き合いが弱かったとされる。米国債はこの夏から中長期債の発行量が増えているが、債券市場の取引が薄いタイミングでは需給から値動きは荒くなるということか。新政権誕生後の来年はさらに発行量は増える(財政赤字が拡大)と思われ、金利(利回り)は実質金利の動向含め、特に金市場を見る上で目が離せない。

本日はユーロ圏の7-9月期実質GDP速報値の発表が日本時間の夕刻にあった。前期比年率換算で61.1%増と大幅な伸びとなった。昨日の米国のGDP(33.1%増)と同じで、前期の落ち込みが大きいところからの反発ゆえに、数字は際立つが前年同期比では4.3%減と、これも米国と同じ。そもそも年率換算というのは、このペースが4四半期続けばという仮定の見積もりゆえに、瞬間(最大)風速のようなもの。米国同様ユーロ圏も回復ペースは足元で落ちているのは間違いなかろう。見かけ上のV字回復ということ。

さてユーロの動きが、目先の金価格の方向性を決めているので、来週以降はどうなるか。米大統領選というビックイベントが控えるゆえに予想は難しいが、ユーロの下値は限定的なものにとどまると思われる。FRBは選挙後の11月4-5日にFOMCをスケジュールしているが、選挙情勢によっては難しい判断を迫られることになる。しかし、それでも予想通り追加経済対策が決まらずに投票日(≒FOMC開催日)を迎える事態となったいま、ECB同様に何らかの緩和策を示唆する可能性があるのではないか。こちらも新型コロナの感染拡大で活動制限が広がっている事情もある。選挙の混乱が起きればなおさらだろう。もっとも、今年は臨時FOMCが頻発しているので、対応はいつでも可能だろうが。いずれにしても、緩和を示唆するのではと思われる。

つまりこの先のユーロドルの下げは限定的で、連動性の高いNY金の下値も限定的と思う。むしろ今週が、当面の2番底というイメージで見ている。

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