亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

ワクチン治験のポジティブ・サプライズで波乱

2020年11月10日 20時44分05秒 | 金市場
新型コロナワクチンのポジティブ・サプライズが市場のかく乱要因となった。バイデン勝利宣言を確認したことで、発表したと見られる米製薬大手ファイザーの発表は、NY時間の午前早くの時間帯。新型コロナワクチンの最終段階の治験(臨床試験)で9割超の確率で参加者の感染予防することができたのと発表。米食品医薬品局(FDA)が、感染が急拡大する中で特例的に決めた緊急使用許可の承認に必要な有効性の水準は、少なくとも50%となっている。基準を大きく超える内容に経済正常化を織り込むかたちで、市場は一気にリスクオン(リスク資産選好)に傾くことになった。

ダウ30種は大きく窓を開けてスタート。そのままこの日の高値、前週末比1610ドル高に暴騰。指標となる米10年債は急落となり利回りは一時0.975%と1%に迫り3月以来の水準に上昇。前週末は0.82%だった。30年債も3月以来の1.767%まで上昇。こっちは1.598%だったので、長いものが軒並み上昇した。インフレ指数連動債10年の利回りは7月以来の高水準、マイナス0.743%。ドル円は2円ほど円安方向に動き105.39円に。ユーロドルは乱高下した上で、ドル指数(DXY)は上昇となり、金売りのプログラムがヒットすることに。

アジア時間からNY早朝にかけて前日比プラス圏となる1950ドル中盤で安定的に推移していたNY金だったが、ファイザーの発表を受けた市場の反応に流されるように、一気に売りに傾くことになった。アジア時間には一時約2カ月ぶりの高値水準となる1966.10ドルを見て、NYの昼前には1848.00ドルと心理的節目の1850ドル割れで7月22日以来の安値水準に。上下100ドル超の挙句に前週末比97.30ドル安の1854.40ドルで終了。その後の時間外で米株が上げ幅を削ったわりに、戻りは鈍く1860ドル台で10日のアジア時間に引き継ぎ。振り出しに戻り1900ドル割れを拾う展開に。

ファイザーの発表について、英BBCは、まだわかっていないことが多く、治験の途中の暫定的なデータであり慎重に見る必要があるとしていた。特に重要項目の免疫効果がどのくらい続くのかについて、判明するのに数カ月から数年かかることもあるとしている。また、このワクチンはマイナス80℃の超低温で保存する必要があることから、多くの人に行きわたるための製造や輸送体制に課題があるとしている。そうした保存設備を備えた医療施設は限られているらしい。

昨日の米国株は、主要指数ともに終盤に上げ幅を削った。90%に効果ありというポジティブ・サプライズに引き金を引かれたような、空売り筋の踏み上げ相場が、ダウの1610ドルの高値と思われるが、一巡とともに上げ幅は半分に。ナスダックは水面下に沈んだ。ハイテク株以外を空売り(ショート)していた筋が多かったとみられる。派手な上昇になったものの、持続性を見るには本日がポイントに。

繰り返しになるがNY金は仕切り直し。ワクチン開発成功は早晩到来することが予想されていたこと。株価上昇が続くようだと、FRBは難しい対応を迫られることに。金は相場が崩れたわけではない。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« バイデン政権、嵐の中で出港準備 | トップ | 金の押し上げ基盤に変化なし »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

金市場」カテゴリの最新記事