亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

1850ドルを維持したNY金  

2020年11月13日 22時49分28秒 | 金市場
NY金は9日の暴落相場に対する自律反発で10日は22ドル高。しかし、ショートカバー(空売りの買戻し)主体とみられる反発に持続性なく、11日は早速反落に。明けて12日は、欧米を中心に新型コロナの感染再拡大が続き、経済活動の制限拡大が伝えられ、安全資産としての見直し買いで反発という展開に。テクニカル的には引値ベースで1850ドル割れを回避したことが大きいという印象。アジアの時間帯に主要通貨に対し売られたドルは、NY時間に買い戻され前日とほぼ同じ水準に戻ったが、金市場への影響は見られなかった。動きが目立ったのは前日ベテランズデー(退役軍人の日)で休場だった米国債相場で、前営業日の1%に接近する水準から0.885%に急落となった。感染急拡大に加え、この日発表された10月の消費者物価指数(CPI)が、前月比で横ばいとなり、予想の0.1%上昇を下回ったことが価格を押し上げ、利回りの低下につながった。

ファイザー社による有望なワクチン治験経過発表が一巡する中で、市場の関心は感染爆発ともいえる現状に向けられている。12日は、当選を確実にしたバイデン前副大統領の新型コロナ対策アドバイザーが、全米で4-6週間のロックダウン(都市封鎖)が必要になる可能性を指摘。まず新型コロナの封じ込めを優勢し、その間に失われる所得を政府の財政出動で補う方針とされる。実はパウエルFRB議長にも共通する構想らしい。ただし、問題はその財政出動を巡る与野党の論議が壁に突き当たっていること。

民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は追加経済対策の交渉再開を求めたが、共和党側は支援策の規模を巡って難色を示し、こう着状態が続いている。民主党側は、「家が燃えているのに消火を拒むようなものだ」(ペロシ議長)と非難したとされる。従来の2兆2000億ドルの予算規模を掲げ、大統領選での勝利から自党の立場が強まったと主張。一方、共和党の上院トップ、マコネル上院院内総務は、これまで示してきた5000憶ドル規模で十分とする。上院が年内にジョージア州の2議席の決着がつかず、年明け1月に持ち越されたことが、影を落とす。共和党がやや優勢と見られるが、いずれの候補も表を分け合っておりまさに僅差。それまで、どちらが主導権を握るのかペンディング。民主共和双方が議会選挙としては空前の資金を投じた、選挙になることが予想されている。

結局、現状では感染拡大がどんなにひどくても、議会では新たな対応策は打ち出せない。さりとて選挙戦最終盤のTV討論で「感染拡大は最終コーナーを回っており、直ぐに収束する」と語っていたトランプ大統領が、(負けを認めていないものの)足元で具体的な行動に出ることは考えにくく、まさに政治空白の中で感染が拡大している。この日、欧州中銀(ECB)のフォーラムで講演したパウエルFRB議長は、「今後数カ月が試練の時となるだろう」としている。


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