亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

浮かれ過ぎのワクチン相場 

2020年11月18日 22時09分04秒 | 金融市場の話題
新型ワクチンによる先食い株高もやや沈静化というか、はしゃぎ過ぎに気付いたというべきか、米国株はいわゆるバリュー株を中心に利食い売りの流れ。しかし、それでも国内小型株群のラッセル2000は、新型コロナ沈静化で正常化すれば内需の回復期待から17日も終値ベースで過去最高値を更新して終了した。

それにしても報じられているようにファイザーのCEOが、90%以上の有効率という治験結果発表後の上昇にぶつけるように、自身が保有する自社株の6割、約560万ドル(約5億8000万円)を売却していたとのニュースには驚いた。もっとも違法ではないので問題はないが、ニュースで買った投資家や以前からの株主は??ということだろう。開発中のワクチンには、やはり何か難点があるのかといぶかってしまうかも・・。週初16日に治験結果を発表したモデルナのCEOも、これまで節目の発表後に持ち株を売却してきたというのだが、今回はどうだったのだろうか。それぞれのCEOは、市場の浮かれ過ぎに釘を刺したということか。

17日にオンライン形式のイベントで登場したパウエルFRB議長は、ワクチン開発の最近の進展は朗報だとしながらも、「特に短期的」には新型コロナ感染率の上昇が「著しい」下振れリスクだと指摘。たしかに1日の新規感染者数が18万人を超える状況につき、そうだろう。「懸念されるのは人々がパンデミック対策への信頼を失い、感染リスクを懸念して活動を控えることであり、すでにその兆候がみられる」とした。大統領自身が最終コーナーに差し掛かっており、間もなく終息すると言ってから、爆発的な感染拡大となっているので、「信頼を失う」のはそのとおりだろう。その上で議長は、「向こう数カ月は非常に厳しい状況になるかもしれない」とした。これは11月5日のFOMC後の記者会見の内容と同じ。FRBの緊急融資措置を終了させたり、債券買い入れ規模の縮小を検討し始めたりする時期にはまだ達しておらず、むしろ「あらゆる手段を使うことに強くコミットする」とした。

しかし、いまや金融政策で足元の状況を改善できるわけでなく、追加経済対策を早急にまとめる必要があることを、パウエル議長自身がよくわかっていると思われる。

注目の小売売上高は減速が鮮明という結果となった。10月の小売売上高は、前月比0.3%増と下方修正された9月の1.6%増から急減速となり、予想の0.5%増も下回った。国内総生産(GDP)の個人消費の構成要素と密接に連動する(自動車・ガソリン・建設資材・外食を除く)コア売上高は、やはり下方修正された9月の0.9%増からも減速し0.1%増となった。

実は、8月後半以降に南部諸州を中心に感染拡大が目立っていたので、9月のデータから減速傾向が現れるのではと思っていたのだが、ふたを開けたら前月比1.9%増(今回下方修正で1.6%増)となり、意外と底堅いのだと・・・思っていた。しかし、いよいよ数字に表れてきたということに。

速報値で前期比年率33.1%増の急回復となった7-9月期の米GDPだが、10-12月期の急減速が懸念される内容といえるもの。11月以降、新型コロナの感染件数が急増しているほか、追加財政支出がまとまらず何百万人もの失業者への政府支援がなくなる中で所得も減っており、小売売上高は今後さらに鈍化する可能性が高そうだ。米国経済の7割を占める消費が停滞した場合、成長が一段と滞ることになる。

自営業者や一時的な仕事に就く労働者(ギグワーカー、フリーランス)など、州政府による通常の失業保険制度が適用されない人への政府支援策が、12月末に失効することになっている。そうなれば、新たに何百万人もの失業者が保険を受け取れなくなる。また、州による失業保険の給付期間である6カ月を過ぎてしまった失業者への政府支援制度も12月末に終了する。当選を確実にしたバイデン新政権の誕生に向けた政権移譲がトランプ政権の拒否で進まない中で、追加の経済対策がまとまるメドも立っていない。さて、どうする。。


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