ゴールドコラム & 特集

Vol.22-シンプルなものほどハイクオリティ

金箔は使われてこそ、何かに活かされてこそ、その箔がもつ本来の魅力を楽しむことができます。

もちろん、打ち上がった金箔そのものも美しいのですが、それを知っているのは、箔をつくる職人、箔を使う職人、箔ソムリエ(私どもの会社でいうところの、金箔の生産管理をしている部署のスタッフのことですけれども。カッコよく言ってみました…)といった、箔の目利きである、とってもディープな世界の限られた人たちです。
今回も、そんな箔の目利きでなくてもそれらしく箔を語ることができる、“箔通”の世界をほんのちょっとだけご紹介。

「平押(ひらおし)」をご存知でしょうか。
これは、箔自体のタイプを意味することもあれば、箔押(はくおし。箔はりのことです。)の仕上がりや技法を指すこともあります。
箔を施したもので、もっともよく皆さんが目にされるものがこの「平押」だと思います。屏風や壁面に、四角の箔がきれいにきっちりと整然と並んではられているものがそうです。ベーシックでポピュラーだけれども、あらゆる面でもっとも技術の高さが求められるのがこの「平押」です。

まず箔自体、一切傷がなく、まったくムラがなく均一に延びているものでなくてはなりません。「平押」には金箔の質の良し悪しがそのまま現れます。もっとも基本的なものほど、本来の力が試されるというか、力量があらわになるというか。ごまかしがきかないんですね。そば屋ならかけそばがおいしい、アイスクリームならバニラがおいしいと本当においしい、とか。かなり個人目線の例えですけれど。


箔座本店「黄金の茶室」の壁面。きれいにきっちり並んだ四角のマス目は、金そのものや吹き付けなどの塗装にはない、箔ならではの美しさです。


銀箔をベースに使用してつくられた屏風。銀箔を燻してつくられた深い色味が美しい!これも四角の箔のマス目がわかります。


箔座日本橋の「黄金の天空」。対象物が筒状で面積も広く、このような凹凸面もあるほか、さまざまなハードルを越えて完成しました。


話は戻りまして。平押用として使われるものは、金箔の中でも上質なものです。
品質のよい箔のためには、箔の前段階、上澄の品質がよくなければなりませんし、箔打ちの職人の方でも、紙仕込みはもちろん、箔打ちにおいても当然熟練の技が必要とされます。
そして箔押。接着剤となる塗料(はる対象物によって漆だったり、代用漆だったり)の状況の把握や必要に応じての調合、塗布のタイミング、塗布したあとの“拭き上げ”(※)の具合。これらが適切に行われていないと箔押に影響大です。
箔押も、極薄の金箔を適切なところにもっていき、まっすぐにきれいにはるには相当の技術を要します。
「平押」は関わる職人の高度な技が結集した総合芸術なわけです。

結婚式場や宴会場で、またテレビでスターの婚約会見を見る際、ちょっと金屏風に注目してみてください。きれいに金箔の四角が並んでいるのが見えるはず。ときには、箔の傷が見えるものもあったりして。
「うん、やっぱり平押だね。平押っていうのはね、金箔の質の良し悪しがね…」
とウンチクを語ると一目置かれるかもしれません。でも“変わった人”と思われる可能性も大ですので、空気を読んだうえでぜひどうぞ。

※箔押においては、基本的に接着剤がベタついている状態ではなく、ていねいに拭き取って粘着があるかないかのような状態で箔をおきます。


箔座オンラインショップ
金沢「箔座」がお届けする「箔品」の数々。美容、アクセサリー、ファッション、食、あぶらとり紙からインテリアまで。箔座が考える“箔のある”ライフスタイルをご提案いたします。

箔座

プロフィール

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HAKUZA

世界に誇る伝統の技を残し、世界遺産となった中尊寺金色堂など重要文化財の金箔を手がける。2002年、「純金プラチナ箔」(特許取得)を開発。箔本来の力と美しさを「箔品」として表現し、「箔座本店」をはじめとする石川県金沢市の直営店のほか、東京日本橋で旗艦店「箔座日本橋」を展開。

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