私が観た「黄金のアフガニスタン」

(上)文化守る、教育への熱い思い 戦場カメラマン・渡部陽一

【私が観た「黄金のアフガニスタン」】(上)文化守る、教育への熱い思い 戦場カメラマン・渡部陽一
【私が観た「黄金のアフガニスタン」】(上)文化守る、教育への熱い思い 戦場カメラマン・渡部陽一
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 アフガニスタンで目にした光景が忘れられません。小さな子供たちが床に座って一心不乱に勉学に励んでいる。辺りを見回すとそこは学校の教室ではない。しかし先生の姿も見える。学校でないのであればここはどこなのか。

 調べていくとこの場所は、混乱によって破壊された学校の代わりに地域の方々が自宅のガレージやお手洗いを改装し、教室がわりとして提供している学び場でした。アフガニスタンの方々はこう語ってくれました。「戦争は武器を使って止めるものではない。戦いは教育で止めていくことができる」。この言葉こそ、私がアフガニスタンにひきつけられていく入り口でした。

 東京・上野の東京国立博物館で開催中の特別展「黄金のアフガニスタン」で出会うことのできた文化遺産の数々が、戦渦の中で守りぬかれてきたのはなぜか。その背景には、こうしたアフガニスタンの方々の教育への姿勢が支えとなっているという印象を強く受けました。

 長い歴史に培われてきた文化遺産は、今を生きる私たちにとっての道しるべであり、判断の力を与えてくれます。国を保っていく最大の経典とは、文化遺産が伝えてくれる歴史をひもとくことにあると感じます。今回の特別展ではアフガニスタンの歴史を直接目にするだけでなく、芸術や遺産を命がけで守り続けてきた人たちの息吹を間近で感じ取ることができます。

 21世紀の今でも、アフガニスタンの暮らしにはアフガニスタン式の生活慣習が色濃く引き継がれています。多民族国家という基盤、宗教観、血族の絆、先祖代々守られてきた慣習こそが生活を守る最善の方法であると認識されています。局地的なテロ事件が続いている現在も、新しき大統領のもと、国家としての姿勢を組み立ててきている。

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