「都市鉱山」から五輪メダルを

公明新聞:2017年2月24日(金)付

持参した携帯電話を回収箱に入れる女性=16日 都庁持参した携帯電話を回収箱に入れる女性=16日 都庁

携帯電話、パソコンに金や銀

携帯電話やパソコンなどの小型家電は、金や銀などの貴重な金属を豊富に含んでいることから「都市鉱山」と呼ばれる。こうした金属から、2020年東京五輪・パラリンピックのメダルを製作する取り組みが注目を集めている。実現すれば、五輪史上初となる。

4月から全国で回収運動

組織委 小型廃家電を活用

都が先行実施

「家に眠っていた携帯電話を6台持ってきた。選手の胸にかけられるメダルの一部になると思うと、うれしくて」。都内在住の女性(72)はこう話し、都庁内に設置された回収箱に、持参した携帯電話を入れた。

女性が協力するのは、東京都が2月16日から始めた、使用済みの小型廃家電を回収する取り組み。これは、東京大会の組織委員会が4月ごろから全国展開する「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」の一環。都が先行して開始した。

大会組織委は「史上初の取り組みに向けて、全国で国民参加型の運動へと盛り上げていきたい。多くの人に協力してもらい、必ず実現させたい」と意気込む。

今後、全国のドコモショップ(約2400店舗)や自治体での回収を予定し、東京大会に必要な約5000個全てのメダルを再生金属で賄う方針。メダルの製作には、金が10キロ、銀が1230キロ、銅が736キロの計2トンが必要だが、製造工程でのロスを想定すると、4倍の約8トンを集めなければならないという。

小型廃家電の回収は、13年4月に施行された小型家電リサイクル法に基づいて、既に各地で実施されている。16年4月時点で1219市区町村が導入し、全自治体の70%に上る。

小型家電リサイクルの主な対象製品対象製品は携帯電話やデジタルカメラ、ゲーム機など100品目を超える【イラスト参照】。自治体によって回収方法は異なるが、公共施設などに設置されている回収箱のほか、自治体が粗大ごみや不燃ごみと一緒に回収する「ピックアップ回収」、ごみ集積所に専用の置き場を設ける「ステーション回収」などがある。

小型廃家電は15年度に約60万トン発生したが、同制度に基づく回収量は、その約1割(約6.7万トン)にとどまっている。制度の周知不足や、自治体の取り組みに差があることなどが、その要因とみられる。

大会組織委は「持続可能な社会へ、大会のレガシー(遺産)となるプロジェクトを成功させたい」と話している。

各地で官民が工夫 イベントなど開催

こうした中、小型廃家電の回収増に向け、自治体や民間企業が工夫を凝らした取り組みを進めている。

例えば長野市では、市内にある電気店36店舗と提携して無料の引き取りサービスを実施したり、毎週日曜日にスーパーの駐車場などで無料回収するイベントを開いている。その結果、市民1人当たりの年間回収量が、15年度は前年度に比べ約14倍もアップした。

また、愛知県大府市のリサイクル会社「リネットジャパン株式会社」(黒田武志社長)では、14年7月から宅配便を活用した回収サービスを実施している。回収を申し込むと、宅配便の担当者が小型家電を詰めた段ボールを持ち帰ってくれる。料金は1箱880円からだが、連携する自治体内で回収品にパソコンがあれば1箱分が無料となる。現在、沖縄県と離島を除く全国でサービスを提供し、「連携する自治体は92を数える」(同社担当者)という。

一方、環境省は、自治体の回収品目や場所などを一元的に情報発信するポータルサイトの開設や、学校教育と連携した普及・啓発活動に取り組む。同省リサイクル推進室は「東京大会をきっかけに、都市鉱山を活用する機運を盛り上げたい」と話している。

公明、循環型社会の実現へ全力

公明党はこれまで、循環型社会の実現をめざす基本法や小型家電リサイクル法などの制定を推進。また、08年には、党青年委員会が使用済み携帯電話のリサイクル体制の強化を求める署名運動を展開し政府に提出するなど、貴重な金属資源の回収と活用に取り組んできた。

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