古代から富の象徴とされ、その希少性から通貨としても使われてきた「金」。価格の変動はあっても価値そのものがなくなることはないため、ヨーロッパの貴族や大富豪は戦争や革命が起こると金を持って逃げ出したといいます。そんな歴史から金相場の世界には「有事の金」という言葉があり、戦争や革命などの非常時になると買われるセオリーがあるのです。

"地政学リスク"に要注意

金融商品には信用リスク、価格変動リスク、為替変動リスク、カントリーリスクといったリスクがあります。これらと並んで近年、注目されているのが"地政学リスク"。古くからいわれていることのようですが、2002年9月の米国のイラク攻撃の際にFRB(連邦準備制度理事会)が使用して以来、市場で広く使われるようになりました。

地政学リスクとは、特定の地域が抱える政治低・軍事的・社会的な緊張の高まりが、関連する地域や世界経済全体の先行きを不透明にすることをいいます。地政学リスクの二大要因として挙げられるのが「地域紛争の勃発」と「テロの脅威」。ここ最近の世界情勢は、正にこの2つの危機にさらされています。というわけで、資産の保険ともいえる「金」に注目が集まっているのです。

"金投資"にも、いろいろな商品がある

金に投資する商品というと、金の延べ棒をイメージする人も多いでしょう。金地金は500g未満の場合、加工手数料がかかるため、500g(245万円程度)、1㎏(491万円程度)といった単位で取引されるのが一般的。しかし、これでは投資額が大きく個人投資家にはなじみにくいのが現実です。そこで、少額で現物に投資したい人の選択肢となるのが地金型金貨。これなら1オンス15万円程度で購入できます。

現物にこだわらなければ、更に少額から投資することが可能です。毎月、数千円単位で金投資ができるのが純金積み立て。貴金属会社や証券会社といった運営する会社に申し込みをすれば、銀行口座から自動引き落として毎月一定額ずつを購入することができます。

このほか、株式同様に取引できるETF(上場投資信託)もあります。東京証券取引所に上場している金価格に連動するETFは5銘柄ありますが、このうち一定の口数を持っていれば金地金の現物を受け取ることができるのは『純金上場信託(現物国内保管型)』のみとなっています。

主な金商品

長期保有を前提に、あくまで余裕資金で

金はそのもの自体に普遍的な価値があるため価値がゼロになることはなく、世界中どこでも換金することができます。しかし配当金や利子がありませんし、ドル建てで国際取引されているため金価格の変動にくわえて、為替レートの影響も受けるなどリスクの高い投資対象ともいえます。

様々なリスクを受けて複雑な値動きをする金は、目的があるお金ための投資には向きません。有事の金とはいえ、もちろん元本保証でもありません。世界情勢が不安定だからといって慌てて買うのではなく、あくまで余裕資金で少額ずつコツコツと買い続けるのがよさそうです。

(※文中内の金額等のデータは2017年5月現在)


鈴木弥生
編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。