不景気になると金、銀、プラチナといった貴金属による実物投資が注目を集める。株や債権のように価値が暴落しないとされていること、世界中で信用があることなどが、投資家にとって大きな魅力に映るようだ。では現在、グローバルにおける貴金属の供給・需要のバランスなどは、どうなっているのだろうか。田中貴金属工業は29日、海外からトムソン・ロイター・GFMS社を招き、そのあたりの市場動向を含めて解説した。

田中貴金属工業は29日、海外から調査会社を招いて最新の貴金属の市場動向について解説した

2017年の国内市場、大きな値動きはなし

田中貴金属工業 貴金属市場部長の金子智秋氏

記者説明会の冒頭、田中貴金属工業 貴金属市場部長の金子智秋氏が登壇した。同氏によれば2017年の日本市場は全体的にあまり値動きがない状況で、現場の人間にしてみると「やや面白みに欠ける展開」(金子氏)だという。しかし、個別の品種に引き続き注目しているとのこと。というのも「昔は先輩に『金のことを知りたければプラチナを見ろ、プラチナのことを知りたければ金を見ろ』と、常に貴金属全体を俯瞰(ふかん)するように言われていた。ところがここ数年、全体に動きがなくても、個別の品種に独自の要因が働く傾向がある」と分析しているからだ。

2017年の金は成長が鈍化

続いて、世界的に最も権威のある貴金属市場の調査会社トムソン・ロイター・GFMS社で長年に渡って調査に携わってきたキャメロン・アレクサンダー氏が2017年の金市場について説明。同氏によれば、2016年の金の「総供給」は4,511トンで、「現物需要」は3,559トンだった。つまり952トンの供給過剰となっている。とは言え、2017年の新規鉱山における生産量は減産が予想されるという。

2017年の金市場について説明を行う、キャメロン・アレクサンダー氏。2016年は金の供給過剰で、その量は952トン(世界の需要の3.2か月分に相当)だった

現在、世界で流通する金の約80%は中国とインドで消費されている。このため金の市場動向を知るには、この両国における消費傾向を知る必要がある。キャメロン氏によれば、両国で金の価格と消費量が最大となったのは2013年のこと。以来、数年に渡り緩やかな減少が続いているとのことだ。ちなみに2016年における金産出国のシェアは1位が中国で、以下オーストラリア、ロシア、米国、ペルーと続いた。1968年当時、世界の金の77%を生産していた南アフリカのシェアは、2016年には5%にまで落ち込んでいる。

世界で流通する金の約80%を中国とインドで消費している。2013年を境に、消費量は緩やかな減少が続いている