スーパーカミオカンデ 視界クリアへ改修工事
新タイプ「超新星背景ニュートリノ」世界初観測目指す
東京大学宇宙線研究所は9日、改修工事が進んでいる素粒子ニュートリノの実験施設「スーパーカミオカンデ」(飛騨市神岡町)を報道公開した。超純水を満たしていた巨大なタンクは12年ぶりに完全に空になり、タンク内壁を埋め尽くす光センサー群が姿を現した。
神岡鉱山の地下1000メートルにあるスーパーカミオカンデは直径と高さが約40メートルの円筒形タンクで、通常、5万トンの超純水で満たして密閉している。内部は真っ暗になるが、ニュートリノが飛来し、水と反応すると発光現象が起きるので、タンク内壁に敷き詰めた約1万本の光センサー群でキャッチする。2006年7月以来、順調に観測を続けていたが、今回の工事のため5月31日、タンクのふたが開けられた。
改修工事は、太古の昔に起きた星の大爆発に由来する「超新星背景ニュートリノ」の世界初観測を目指す新プロジェクトの一環。このニュートリノをとらえるために新設した水処理プラントがフルに能力を発揮できるようにタンク内の配管を改造する。またタンクから毎日約1トンの水が漏れているため、鋼板の溶接部に新開発の止水剤を塗って保護する。光センサーは現在、数百本に不具合が生じているため、それらも交換する。
工事は少しずつ水を抜きながら、最初はタンクの天井部分、次に側壁分の作業を進め、このほど完全にタンクが空になった。これからタンク底部の工事を進める。「10月中旬には工事が終了する予定で、その後、水をため始め、年末には再び満杯になる予定だ」とスーパーカミオカンデの代表を務める東京大学宇宙線研究所の中畑雅行教授は話す。超新星背景ニュートリノの本格的な観測は早ければ来年中に開始する計画。「超新星背景ニュートリノを使って宇宙の歴史をひもといてみたい」(中畑教授)。