オリパラ、全国の魅力たっぷり 選手の栄誉を和で彩る
2020年東京五輪・パラリンピックでは、選手に授与される品なども日本の魅力発信に一役買う。木製のメダルケースは北海道の匠(たくみ)たちが丁寧に仕上げ、ブーケには東日本大震災の被災地の花々を多用。多くの伝統工芸品を採用した公式グッズを含め、「和」がちりばめられている。
■北海道の職人が作る木製メダルケース
人口約4600人、北海道東部のオホーツク地域にある津別町。冬場は最低気温がマイナス20度を下回ることもある小さな街の木工所で、東京五輪・パラリンピックで使うメダルケースの製作が急ピッチで進んでいる。春までに5千個強を完成させる計画だ。
1950年創業の地元家具メーカー、山上木工が担う。従業員22人ながら、コンピューターで数値制御した機械加工と職人の手作業を組み合わせた技術力に強みを持つ。「大きな仕事をしたい」(山上裕一朗専務)と2018年秋に大会組織委員会の製造委託契約に応募し、コンセプトなどの選考を経て採用された。
深い藍色のケースは直径約12センチ、厚さ約6センチで道産のタモを使用する。粘り気がある丈夫な木材でバットなどにも使われ、木目が力強く浮き出る。仕事を通じて懇意になった専務に請われ、デザインを担った千葉県のプロダクトデザイナー、吉田真也さんは「スポーツの文化や躍動感を感じさせる素材」と語る。
実際の工程では0.1ミリ単位まで調整した工作機械で木材を削ってメダルの収納部分などを形づくり、職人が1個ずつ手で感触を確かめながら研磨して仕上げる。うまく塗料を乗せ、美しい木目を出すには人の手で磨く作業が欠かせない。
中でもこだわりは、表向きは見えないように蓋と本体に4カ所ずつ埋め込んだ磁石だ。蓋を開けた状態で磁力で止め、ケースを立てて展示できる仕様にした。
山上専務は工作機械メーカーのDMG森精機出身。インドなど海外出張の際に日本のものづくりへの信頼の厚さを肌で感じ、父親が経営する家業の力になりたいと13年にUターンした。今回の受注を通じ「田舎にだって全国や世界に挑戦できるチャンスが平等にあると伝えたい」と話す。
■被災地の花をメダリストに
2020年東京五輪・パラリンピックでは、選手にメダルと共に花束の「ビクトリーブーケ」が授与される。東日本大震災からの復興を印象づけようと被災地で育てられた花を多く使い、選手の活躍を彩る。
五輪とパラリンピックで計約5千個を用意。いずれも薄緑のトルコギキョウ(福島県産)、鮮やかな青のリンドウ(岩手)などをあしらい、五輪用ブーケにはヒマワリ(宮城)、パラリンピック用には濃いピンクのバラ(同)を加える。夏場に被災地で育てられている品種を中心に採用した。
デザインなどを担った日本花き振興協議会の磯村信夫会長は「種苗が海外に輸出されて高く評価されており、『さすが日本』という品種を選んだ」と自信を見せる。
宮城県園芸振興室の北奥真一・室長補佐は「被災した土地をヒマワリ畑にした所もあり、復興のシンボルにふさわしい。早く準備に入り、無事に選手の元に届けたい」と意気込む。今後、生産業者を選定し、5~6月には植え付けを始める予定だ。
検疫で持ち帰れないなどの理由で、16年リオデジャネイロ大会、18年平昌冬季大会ではブーケ授与は見送られた。復活させる東京大会では、持ち手に五輪用、パラリンピック用にそれぞれの大会マスコット「ミライトワ」「ソメイティ」のぬいぐるみを取り付け、花以外を選手が持ち帰れるようにしている。
■伝統工芸、公式グッズに
まだまだあります、和の魅力――。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は各地の工芸品に大会エンブレムやマスコットなどをあしらった公式ライセンス商品「伝統工芸品コレクション」を公式ショップなどで販売している。
商品は南部鉄器(岩手県)や赤ベコ(福島県)、万古焼の蚊やり豚(三重県)など、2019年12月時点で100点を超す。価格帯は2千円台のだるまから、20万円を超すひな人形まで幅広い。訪日外国人が土産物として購入していくケースも多いという。
過去の大会でも伝統工芸品が公式商品として販売されており、14年ソチ冬季大会ではマトリョーシカが人気を集めた。
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