Go to contents

金の欲望

Posted April. 02, 2020 08:07,   

Updated April. 02, 2020 08:07

한국어

資本主義は、人間の欲望を煽りながら花を咲かせた。ベルギーのアントワープは、16世紀の欧州第一の貿易港であり、商工業の中心地だった。外国商人が殺到して、両替業や高利貸しで大きな富を蓄積する人が増え、新興富裕層は豪邸を建ててブルジョアの生活を享受した。

アントワープの画家・クエンティン・マサイスが描いたこの絵の中には、きれいに着飾った金貸し業者と彼の妻が登場する。夫はテーブルの上に置かれたコインを天秤にかけるのに忙しい。お金の計算に熱中する夫とは違って、祈祷書を読んでいた妻は全く集中できない。手は本のページをめくっているが、目はお金と天秤を向いている。テーブルの上にはコインに加え、真珠や貴金属、装飾、水瓶などが置かれていて、後ろの棚には本や書類、装飾用の皿やリンゴ、数珠と火の消えたキャンドルなどがある。軽く開かれたドアの外に見える二人の男は、悪口を言う隣人であるか、お金を借りにきた顧客であるはずだ。

一見すれば、この絵は成功した金貸し業者が、自分の富を誇示するために注文した肖像画のようだが、実は道徳的教訓を盛り込んだ風刺画だ。絵の中には、暗示と象徴がいっぱいだ。まず夫の前に置かれたお金と金、真珠は人間の欲望を象徴する。棚の上のリンゴは堕落と原罪を、火の消えたろうそくは、死を意味する。これはお金についての欲望や貪欲は罪であり、死の前ではすべてがはかないものだという教訓を与える。また、天秤は公正と信用を象徴する。天秤は公正であるべきで、秤(良心)を騙せば信用を失うという警告だ。最も注目すべきものは、テーブルの真ん中に置かれた凸面鏡である。教会が見える窓の前で苦悩する老人が描かれているが、窓枠は十字架の形となっている。これは神の前で過ぎ去った人生を反省する画家自身の姿であるか 金貸し業者の未来の姿にもなりうる。お金は欲望の別名でもある。欲望の奴隷になって道徳と良心を捨てれば、結局、神の審判を受けるという教訓。16世紀の絵が伝えるメッセージは、お金と欲望が支配する今日でも依然有効に見える。

美術評論家