ゴールドコラム & 特集

香港ゴールドマーケット探訪記


12/5-9と香港に行ってきました。8日月曜日に金銀業貿易所(The Chinese Gold and Silver Exchange Society:GGSES の主催する会議がありそれに招待されたので。(少なくともそういう建前で。笑)The Hong Kong Gold and Silver Society Exchangeはその取引単位であるTaelから通称Taelマーケットとも呼ばれ、僕のようなold timerにはその名前の方がぴんと来ます。現在171社のメンバー会社からなり、その歴史は世界の現存のゴールドの取引所ではおそらくもっとも古く1910年に取引が始まったとされています。アジアでは日本で金の輸入自由化(1970年代)よりも、そしてアメリカでのComexでのゴールドの取引開始(1970年代)、ニクソン大統領による金とドルの兌換中止決定(1971年)といったゴールドの世界的な自由市場が始まる60年も前に取引されていたのです。

1980年代から1990年代前半にかけて、Tocomが隆盛になる前はこのTaelマーケットがアジアでのゴールドの価格形成にもっとも力を持っていたと言っても言いすぎではありません。それがTocomが活発になっていくと市場の力はTocomに移動していき、どんどんとその影響力は薄れていき、その複雑な取引の仕組み、そして香港ドルという地方通貨という観点からも海外勢の参入はなく、香港の中だけの地場のマーケットとして残っていきました。




今回の会議はこのCGSESが来年の初旬にシンセンの前海という地域で新たなゴールドとシルバーの取引を始めるのでそのお披露目の会議でした。中国のこういったイベントでは必ず地方政府が絡んでおり、今回も例外ではなく前海政府の肝いりという感じでした。ビデオで現地の様子も流していましたが、とても立派な箱物ができていました。ま、問題は取引が盛り上がるかどうかですが。CGSESは2013年9月にShanghai Gold Exchange(SGE)との提携を発表し、この動きはそれが関係しているものと思われます。これで中国には上海にSGEと上海Free Trade Zone、そして香港と前海の4箇所にゴールドの取引所が存在することになります。SGX(シンガポール)、CME(香港)、ICE(シンガポール)とアジアでの新たな取引所の設立がまるで雨後の筍のようにすすんでいます。

この中国の4つの取引所の関係を示した図が下の写真です。香港系の二つはドル建ての取引を用意しているところが大きな違いでしょうか。SGEとの裁定取引が活発に行われ、それによって、香港からも中国のゴールド市場へのアクセスが可能になり、取引増を狙っているといえるでしょう。果たしてこのマーケットが成功するかどうかと考えると個人的には難しいと思います。ただでさえ上海にInternational Boardという海外から参入者用のプラットホームができ、中国国内マーケットのつなぎができる枠組みが出来上がっており(これまでのところは鳴かず飛ばずですが)、新たに前海でそれができるようになっても、上海とのつながりという意味ではやはり見劣りします。現物輸入と加工の宝飾加工基地というシンセンの立場をうまく利用できればよいのですが。



今回のこのお披露目会への出席者はおそらく250-300名。その大部分が香港・中国からの参加者だったようです。日本人は僕とTocomからの代表者が一人だけ。他の外国人も数えるほどしかおらず、進行やスピーチはすべて広東語か普通話で英語の通訳なしでした。これは正直きつかったです。笑。僕にとっては香港のゴールドディーラー連中と集まって旧交を温め、情報交換をするだけでも大きな意味があるものでしたが。

ということで、堅い話はここまでにして、もうひとつの目的であった香港のトレーダーたちとの集まりは会議終了後のバーでの飲み会でした。もはや30年近くもの付き合いの仲間たち。いつ集まっても最高です。



そしてもうひとつ重要なのは香港グルメ。今回はHappy Valleyの竹園海鮮飯店で最高のふかひれスープ(潮州スタイル)を食べました。パクチョッハー(生きてる海老をそのまま蒸したもの)、とこぶし、マテ貝、そして星班(ガルーパ、はたの一種ですね)もとても美味しかったです。香港といえば海鮮ですな。



で最後の締め(いつもは朝食に行きますが)羅富記の皮蛋痩肉粥。昔からこれが大好きで、僕はこれだけのために飛行機にのって香港に行ってもいいと考えるくらいです。香港行くチャンスがあればぜひお試しあれ。中環にあります。(ここのワンタンメンも最高です。)



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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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