ゴールドコラム & 特集

外見は「金属」だが本質は「通貨」 「商品」の域を超えた多様なニーズ

機関投資家のための運用情報誌「オル・イン」Vol34 Winter,2014(2014年12月)号より。

 「ゴールド・デマンド・トレンド 2014年第3四半期」(ワールド ゴールド カウンシル発行)によると、14年7?9月期の世界の金需要は合計929トン(金額ベースでは383億米ドル)で、前年同期比2%の減少だった。中国の需要は例外的な年となった前年からの反動で大幅減となった半面、インドでの需要が堅調で、同国が中国に代わって世界最大の金需要国に返り咲いた。

 特にインドの宝飾品向け需要は183トンで、前年同期比60%増となった。
これは前政府の輸入規制や輸入関税の引き上げ策による前年の需要後退からの反動に加え、新政権がもたらした政治の安定によって消費マインドが高まったことも、プラスに働いているようだ。

 金地金・金貨への投資および金現物を裏付けとするETFへの投資需要は、前年同期比6%増の204トンで、これはETFからの資金流出が減少したことが主因である。一方、日本の投資需要は再びマイナスに転じ、世界で唯一、金地金・金貨を売り越した国となった。
 世界の中央銀行等公的セクターは、15四半期連続の買い越しで、2014年1月からの金購入量は335トン(金額ベースで139億米ドル)となった。地政学的な緊張の高まりや、米ドルからの外貨分散が購入を後押しした。

■他のコモディティにはない「通貨」としての長い歴史

 金はしばしばコモディティ(商品)の一つに分類されるが、エネルギー資源、農産物、産業用金属、貴金属など他のコモディティと金を比較すると、さまざまな違いがある。例えば、金の需要全体に占める産業用用途の割合が1割程度にとどまり、経済との連動性が低いこと(図1)や、価格のボラティリティもエネルギー資源や農作物と比べてはるかに小さいこと(図2)などが、大きな違いとして挙げられる。


図1:鉱工業生産指数との相関(G20平均)


図2:各コモディティのボラティリティ


 その要因としては、「ある程度の市場規模が確保されていること」「生産地が分散されているため、特定の地域における紛争や天候の影響が少ないこと」「リサイクルが可能であり、長期的に見ると上値抑制効果をもたらすこと」などが考えられる。

 また金には、通貨としての長い歴史があり、今もなお一部の国・地域では、決済手段として使われている。金本位制が崩れ、ドルを基軸とする通貨体制へと移行してわずか40年。金は依然として、円やドルなどの通貨と同様に為替市場でも活発に取引されている。

 ちなみに米ユタ州では、2011年に金を法定通貨とみなす法律が新たに可決され話題となった。また、国際的な決済機関では担保としての金の受け入れを認めており、14年11月には、否決となったがスイスで中央銀行による金の積み増しなどに関する法案の是非を問う国民投票も行われた。単なるコモディティの枠を超えて、金が置かれている世界ははるかに広く深い。

詳細は「金の特性:外見は金属、本質は通貨」(ワールド ゴールド カウンシル、日本語発行2014年10月)で解説している。http://www.gold.org/investment/gold-investment-research

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