ゴールドコラム & 特集

2014年の一年確定、そして2015年はどうなる?

皆さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。2015年も皆さんにとってよい一年となりますように。

さて昨年12月31日のニューヨークマーケットの終わりで正式に一年の相場が終わりました。改めて昨年のレンジをまとめてみました。振り返りは前回書いたので今回は数字のみ。




「2015年の展望」

2014年はコモディティ全体にとっては散々な一年であったと言えます。原油をはじめとしたエネルギー相場は、ほぼ壊滅と言っていいほどの暴落、シルバーや銅と言った素材メタルも大きく下げ、新興国需要が大きく伸びたコーヒーを例外とすれば買われたのは、株、ドルそして債券でした。米国の金融緩和の終了と経済正常化の歩みにより、ドル、そして株への資金集中傾向は今年2015年も続きそうです。これはやはりゴールドをはじめとする貴金属にとってはネガティブな環境と言えるでしょう。多くの金融機関がゴールドに対して弱気な見方を続けています。米国の金利の最終的な上昇はやはり来たるべきものとして見ているからです。ただしドル建てのゴールドはこれだけによって下落するとは私は思いません。もしそうであれば昨年とっくに1000ドル近く、もしくは1000ドル割れまで下がっていてもおかしくないと思うからです。下がってからの粘り腰といったものをゴールドの相場に感じているのは僕だけではないでしょう。1150ドル(瞬間的には1130ドル台)まで下げても不思議とそれ以上は下げず、逆にそこからは1200ドルの近くもしくはそれ以上にまで、ドルの動きとは関係なく上がってくるマーケットだと感じませんか?特に昨年11月以降、ある程度の下値ではドルの動きとゴールドの動きが乖離してくるようになっています。これは値ごろ感からの実需の買いがゴールドのこれ以上の下落を阻んでいるのであると考えられます。そしてもうひとつ、今年注目すべき要因としてギリシャを中心とした欧州の情勢、ロシア、そして中国を取り巻く国際情勢が上げられます。もしギリシャのユーロ離脱(Grexitと呼ばれているようです。= Greece + Exit)が現実となれば、ギリシャは国際金融市場では資金を調達できなくなり、通貨の大幅切り下げは必至。そしてそれはおそらくキプロス、スペイン、イタリアといった南欧諸国に危機を広げ、ギリシャ離脱が悪しき前例となりユーロ圏自体の分裂となる恐れがあります。このような情勢下ではゴールドがsafe havenとして脚光を浴びる可能性は大きいといえるでしょう。(VIX (Volatility Index : 恐怖指数)は上昇してきています。)

(ゴールドとドル・ユーロの動き)



(VIX-恐怖指数とゴールド価格の動き)



そしてやはり金融要因以外のもの、実需がゴールドの相場にはあります。実際に掘って、作ってそれを利用する人がいる、実需がある「物」であるからです。昨年2014年1150ドル以下で見られたような実需の買いは存在し、金融要因だけで下がるのには自ずから限界があると考えます。ただ現在ゴールドのマーケットを動かしているのは金融関連マネーが最大のものであり、そのマネーがほかに向かう以上、上値が抑えられるのはやはり必然だと思います。(もし欧州、ロシア、中国、そして実は日本も、大きな混乱に陥らなければ、ですが。)

そしてこのような状況下、昨年に続いて今年も貴金属でポジションを持ちたいとすれば、それやはり「円建てのメタル」です。ドルが強くなるということは、ドル建てゴールドにとってはネガティブな材料ですが、ドルが強くなるということは、同時に円やユーロといったほかの通貨が弱くなるということを意味します。今年2015年もECB(European Central Bank)とBOJ(Bank of Japan)は自らの通貨安を促進する政策をとらざるを得ない状況にあります。BOJはまさに異次元の金融緩和を続けており、そのバランスシートはFRBの金融緩和を遥かに上回るレベルに大きく膨らんでいます。2013年末の時点ですでに中央銀行の資産(バランスシート)のGDPに対する割合はFRBは約24%、ECBも24%、BOE(Bank of England)は25%、BOJは47%ありました。そして2014年末近くにはBOJの資産残高は286兆円を超えており、これはGDP比ほぼ60%となっています。そしてさらに注目すべきはやはりその借金の大きさです。現在、日本の巨額な財政赤字のための借金はGDPの245%!となっており、これは世界に比較すべき国はジンバブエくらいという状況にあります。ちなみに2014年時点での財務省の発表によれば、日本232%、米国106%、英国110%、ドイツ83%、フランス116%、イタリア147%、カナダ97%で先進国の中では、日本の230%を越える債務残高は群を抜いています。

(GDPに対する日本の債務の割合)



FRBがそのバランスシートを縮小させる方向に動いているのに対して、BOJは大きくそれを膨らまし、ECBはこれから膨らませていく方向にあります。2014年、日本円は14%下落し、Euro は12%下落しました。これにより、円建てゴールドは11.6%上昇し、ユーロ建てゴールドは8%上昇しました。(ちなみにドル建てゴールドは1.8%の下落。)この流れは今年2015年はさらに加速されると思われます。また現在の国際政治情勢からも資金は米国に流れ込む動きは変わらず、米ドルはさらに強くなると思われますが、そういった不安からの安全を求めてのゴールドへの資金回帰も可能性が高いと思います。ドル建てのゴールドの下値が限られているとするならば、今年の最大のテーマは「通貨安」だと考えます。ユーロは下がるでしょうし、円はもっともっと下がると思います。とすれば日本人の我々(特に日本人の我々はと強調したい。)は素直に円建てのゴールドを買うのが正解となる一年になるのではないでしょうか。

本当はそんな混乱がないのが一番よいのでしょうが、リスクヘッジとして考える意味は大きいと思います。

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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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