金価格がフラン上限撤廃受け上昇、市場に不透明感広がる

[ロンドン 15日 ロイター] - 15日の金価格は、スイス国立銀行(中央銀行)によるスイスフランの対ユーロ相場上限撤廃を受け、4カ月ぶりの高値となった。アナリストの間では、金の投資妙味が増したのではなく、市場に混乱が広がったことが影響したとの声が出ている。
スイス中銀のフラン上限撤廃は、安全な資金避難先として金と競合関係にあるスイスフランの魅力を高めるため、金にとって不利な材料となってもおかしくはなかった。しかし実際には、市場に漂った不透明感が金価格を押し上げた。
マッコーリーのアナリスト、マシュー・ターナー氏は「この状況の枠組みは金にはややマイナスだが、金を手助けしているのは不透明感だ」と指摘。「大きなマクロ環境の変化を目の当たりにしつつあり、その変化の一部は金の弱気要因ではあるものの、現実には強気相場が生じている。というのも不透明感と、中銀が再び市場の統制力を失いつつあるとのムードが生まれているからだ。それが金に追い風となっている」と述べた。
スイス中銀の決定により、スイスフランは15%も急騰し、動揺が金融市場全体に波及した。こうした中で金現物は一時1オンス=1263.90ドルと昨年9月以来の高値をつけて、年初来で6%を超える上昇となった。
もっともGFMSの金属調査責任者、ロナ・オコネル氏は、主要国の金融政策運営は方向性がますますかい離していくと示唆したスイス中銀の声明からは今後ドルが他の通貨に対して上昇することがうかがわれ、ドル安がプラスに働く金にとって逆風になりかねないとの見方を示した。
金融市場の不安定化はこれからも総じて金にとって好材料となるだろうが、スイスフランの上限撤廃の影響にはなおはっきりしない部分がある、とアナリストはみている。
ジュリアス・ベアのアナリスト、カルステン・メンケ氏は「スイス中銀の決定は数多くの混乱を巻き起こしており、この混乱が収まって金にとってどう作用するのか明確に見極められるようになるまでにはあと数日が必要になる」と話した。

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