ゴールドコラム & 特集

スタンダードバンク・コモディティ四半期レポート 2015-01-16

先日スタンダードバンクが四半期レポートを発表したので今週からはそれを要約して送ります。

(貴金属価格予想)



「Gold」

底値と方向性を見つける?

ゴールドは強いドルと上がり続けた株式相場の下で重たい圧力のかかった第4四半期でしたが、ようやく1150ドル近辺でその底値を見つけ、1月には上昇を始め1230ドルを回復しました。ゴールド価格の上昇は弱いインフレ指標の中、ゴールドにとっては決してよくない環境で起こりました。

短期的な争い

現物市場は現状は需要が弱いですが、中国の2月半ばの旧正月が終わったあとの需要、およびその次はインドのウェディングシーズンが始まり、これに対する需要が始まることが、現在からQ1およびQ2の相場の下値を支えをすると考えます。弱まりつつあるインフレ懸念を示す経済指標にもかかわらず、マーケットのポジションはゴールドに有利になっています。CFTCのComex投資家ロングポジションは建て玉に対する割合が23%に増加してきており、過去5年間の平均である22.7%を若干超えています。

総体的には2015年の本来ならばゴールドにとっては弱い環境も、ゆっくりと神経質な動きながら、引き締まった供給とまずまずの需要が価格の下支えをすると考えます。投資家は少なくともこれまでのところ、強いドルや弱いインフレ率にもかかわらずゴールドを買っています。原油価格の下落が米国の消費者にとっては恩恵となり、宝飾需要が伸びるのかどうか、また中国の宝飾需要もゴールド需要のスイングファクターとして今後の成り行きが注目されます。

中期的指標は供給不足と価格の上昇を示唆

中長期的には世界のゴールド需要は、供給を上回ると考えます。これから5年間は世界のゴールド生産は毎年2%の減少を予想。これは鉱山産業がゴールドの価格下落に適応してきたため。ゴールド鉱山産業はもはやコストを削減し、新たな投資を避ける方向で動いています。我々の2015年の相場予想である1223ドルですが、このレベルでは鉱山会社は税金と金利引き後で利益を大きく得るのは難しくでしょう。もちろんそれは地域による差、そして通貨による差が大きく、場合によっては生産の助けにもなりますが、新規投資の中止や延期は中長期的な影響として生産活動にはマイナスとなり、これはゴールドの価格を支える材料となります。

もしゴールドが1200ドル以下で長期間推移することがあれば、ゴールドの生産はより深刻に減少することになると思われます。もしそうなれば需給のバランスはさらに悪化することになります。ただ、注意しなければならないのは、生産コストの下値を支える力を過信しすぎることに対するリスクです。世界の経済危機、欧州をめぐる議論、そして金融緩和以前のゴールドは800ドルの商品だったということは肝に銘じておく必要があります。さすがにこのレベルへの適応はもはやないと我々は考えますが、それでも100%可能性がないわけではないですから。

ゴールドが通貨なのか商品なのか、そして需給が価格に与える影響は、という議論は続きます。現物という観点からは2014年11月のインドの輸入規制の撤廃はゴールドにとってはプラス材料です。しかし、増加した現物需要の一部は中央銀行のゴールド買いの減少とETFの売りによって相殺されるでしょう。

中国の宝飾需要は世界のゴールドの可変要因として今後どうなるのかが注目されます。中国の需要は、投資、宝飾、そして中央銀行の買いで増え続けると予想しますが、宝飾需要は価格にどれくらい敏感に反応するかが今後影響を与えるでしょう。中国のゴールド輸入は確実な数字は得ることができません。香港からの輸入は全体の一部であり、特に上海を中心としたほかの地域での輸入も活発になってきています。残念なことに中国はより不透明になっています。また原油安は、米国市民にとっては直接的なQEのようなものであり、それによる米国の買いがどうなるのかも興味あるところです。

以上

ここから訳者(つまり僕)注;

1/21日現在、以上の相場予想の段階と状況が変わっている点として、ゴールドがすでに1290ドル台にまで上昇していること、そして売り手として考えられているGold ETFが大きく買い手に回っており、投資家がゴールドに参入してきていることがあげられます。


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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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