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TOCOM「東京ゴールドスポット100」、早くも取組高5万枚突破

東京商品取引所(TOCOM)に上場している「東京ゴールドスポット100」 の取組高が6月10日、5万枚(※枚は取引単位)の大台に乗せた。上場初日の取組高は1万0,814枚だったが、5月下旬に円安で円建て金価格が上昇したという相場環境の追い風もあり、25営業日目にして早くも5万枚の大台に乗せている。

「東京ゴールドスポット100」と同じく1枚=100グラムが取引単位になる「金ミニ先物」の場合だと、2007年7月の上場から取組高が5万枚台に乗せるまでに約8.5ヶ月が掛かっており、それと比較しても「東京ゴールドスポット100」は良好なスタートダッシュを切ったと評価できる。投資家が、金先物、金ミニ先物と並ぶ有望なマーケットと捉え始めていることが窺える。

「東京ゴールドスポット100」はまだ知名度の高い商品とは言い難いが、通常の商品先物取引に存在する限月という取引期限に関するシステムが存在せず、事実上は無制限の期間にわたって取引を継続できることに特徴がある。金先物取引の場合だと、最長でも6ヶ月間が取引期限となり、それ以上の長期にわたって取引を継続するには、一旦ポジションを決済してより期限が先の限月に乗り換えるロールオーバーという取引が要求される。しかし、「東京ゴールドスポット100」は全営業日に自動的にポジションを翌営業日に持ち越すことで、期限にとらわれずに金先物市場に投資を行うことが可能になる。

スワップ金利の受け取り・支払いなどは存在しないシステムになっているが、基本的にはFX取引(外国為替証拠金取引)と似通った取引ルールであり、FX市場で外国為替の売買で経験を積んだ投資家を中心に、金市場への参入ハードルを下げ、TOCOM全体の売買を活性化させることが目指される。FX取引と商品先物取引との間にある大きな障壁の一つである「取引期限」の問題を解消することで、これからどれだけ新しい投資家を商品先物市場に呼び込むことができるのかが試される。

短期売買であれば「金ミニ先物」と大差はなく、必ずしも「東京ゴールドスポット100」にこだわる必要はない。現時点では、「金先物」の1枚=1,000グラムといった規模の大きい売買を行う際には、高コストの商品とのデメリットもある。ただ、期限にとらわれずに取引を行えることは、先物取引に馴染みの薄い投資家層にとっては大きなメリットであり、今後は商品先物取引全体の入り口として、「東京ゴールドスポット100」を投資対象の一つと捉える動きがどこまで広がっていくのかに注目したい。

早くも5万枚の取組高を達成したことは、金市場に対する投資家の関心の高さを示したと言えるが、原油やガソリン、天然ゴム、トウモロコシ、大豆といった他の魅力的な投資商品にも投資家の本格参入が始まって、初めて「東京ゴールドスポット100」は成功したと言えよう。



参考:東京商品取引所(TOCOM)東京ゴールドスポット100

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プロフィール

小菅 努

Tsutomu Kosuge

マーケットエッジ株式会社 代表取締役

1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。

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