コラム:金相場急落、「炭鉱のカナリア」が発する警告

コラム:金相場急落、「炭鉱のカナリア」が発する警告
4月15日、金相場は、金融市場における「炭鉱のカナリア」と言える。金価格のバブル崩壊は、債券や商品、株式の各市場に潜む巨大なリスクを警告している。写真は2月、香港で撮影(2013年 ロイター/Bobby Yip)
By Ian Campbell
[ロンドン 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] 金相場は、金融市場における「炭鉱のカナリア」と言える。金価格のバブル崩壊は、債券や商品、株式の各市場に潜む巨大なリスクを警告している。それらの危険はまだ差し迫ったものではないが、まぎれもなく本物だ。
最近の金相場の調整は極端だ。金相場は過去10年にわたり順風満帆だった。金投資家たちは、米国の住宅バブルを賢明にも信用せず、住宅バブルがはじけると量的緩和で米ドルは下落し、超低金利によって金保有の機会費用も低下した。
しかし、米景気は弱いながらも回復の兆しを見せ、米ドルは上昇し始めた。スマートマネー(先見の明がある投資家の資金)はすでに金から逃げ出している。相場の転機は来るべきして来たのだ。
金と銀以外の市場でも大きな調整局面のリスクは存在するが、相場の転換点はまだ訪れていない。株式市場と商品市場にとって問題になるのは、米国経済や世界経済についての懸念や、企業業績のネガティブサプライズのリスクだ。中国の第1・四半期の国内総生産(GDP)伸び率は前年比7.7%と、第4・四半期の7.9%から鈍化し、市場予想の同8.0%も下回った。米国の最近の小売売上高や雇用に関する指標も落胆を誘うものだった。
ただ、こうした景気への懸念は、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和がすぐには終わらないとの期待を維持する。米国株式市場は過去最高値を更新しており、投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー・インデックス(VIX指数)は2007年以来の低水準となっている。
米国債価格の上昇は、量的緩和が早期に終了することはないとの見方を裏打ちするものだ。米10年債利回りは、3月の2%強から足元では1.72%に低下した。日銀の大胆な金融緩和も米国債の支援材料になるだろう。金融緩和と経済の低成長が続くとの見方を背景に、安全資産である国債は引き続き選好されるだろう。
金融市場にとって大きな問題は、経済成長への懸念が後退し、FRBが異例の金融政策を終える時に訪れる。そうなれば、株式と商品はかなり下落する可能性がある。ただ、経済のファンダメンタルズ強化により、調整はある程度軽減されるかもしれない。国債価格の調整はより深刻だろう。
金相場急落が投資家に与える教訓は、すでに多くの人が知っているものだ。市場はイージーマネーによって危険なまでに歪められており、いずれ訪れる調整局面では、相場の下落は深刻なものになることを忘れてはならない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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