急増する金の密輸に警戒を
金の密輸入が急増している。税関で義務付けられている消費税の納付をせず、その分を利ざやとして稼ぐことが目的だ。密輸であげた利益は反社会勢力の新たな資金源ともなっている。税関当局は監視体制を強化すべきだ。
日本国内の貴金属販売店では、金の投資用地金(バー)や金貨は消費税込みの価格で取引される。そのため、消費税を払わないで金を密輸入して国内で売却すれば、消費税分がもうけになる。
年平均の国内の金取引価格をみると、2005年から15年までに3倍近くまで高騰している。そこに14年の消費税率引き上げが加わり、利ざや狙いの密輸の急増につながったとみられる。
財務省によると、昨年6月までの1年間で金密輸の処分(摘発)件数は294件と、1年前に比べて7割増え過去最高を記録した。一度に持ち込む量が多くなり、手口も巧妙になっているという。
今後、消費税率が引き上げられたり、金価格が高騰したりすれば、密輸はさらに増える可能性がある。税関当局は監視の目を光らせ、摘発に努めてもらいたい。
貴金属業界は昨年から、マネーロンダリングを防ぐ目的で200万円を超す取引について本人確認を厳格にしている。不正に持ち込まれた金が国内で流通するのを防ぐため、投資家の利便性を損なわないようにしながら、小売店も警戒を強めてほしい。
こうした金の密輸に反社会勢力が関与し始めたことは看過できない。沖縄税関は昨年、プライベートジェット機で112キログラムの金を密輸入しようとした暴力団関係者などを告発した。
反社会勢力は従来の資金源が細る中で、金の密輸だけでなく、さまざまな不正取引に手を広げている。沿岸地域では中国向けに高値で売れるナマコなどの密漁が急増しており、ここにも多くの反社会勢力が加わっている。
新たな資金源を断ち、圧力をかけるため、警察もより幅広い分野で情報を収集してもらいたい。