17年の金の世界需要、前年比7%減 投資分野が減少
2017年の世界の金需要が2年ぶりに前年を割り込んだ。金の国際調査機関、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が6日発表した報告書によると、17年の世界の金総需要は4071トン(速報値)と16年に比べて7%減った。世界的な株高を背景に投資資金が金から株へ移行、上場投資信託(ETF)や地金といった投資分野の需要減が目立った。
投資需要は1232トンと前年比23%減少した。特に落ち込みが目立ったのが主に機関投資家やヘッジファンドが運用するETF。16年に比べて6割減った。16年は英国のEU離脱や米大統領選で政治リスクが連想され、資金流入が12年以来の高水準を記録。大幅な需要増の反動が大きく表れた。
個人投資家が購入する地金や金貨需要も2%減った。最も落ち込んだ米国は16年比58%減と、10年ぶりの低水準だった。17年は好調な企業業績を背景に米株が記録的な高値を更新。高い利回りを求めて「株式市場へ資金を移す動きが出た」(WGCの森田隆大日本代表)。
17年の金相場は北朝鮮の地政学リスクやトランプ政権とロシアとの不適切な関係を巡る「ロシアゲート」問題を背景に上昇基調にあった。国際価格は1トロイオンス1200~1360ドル台の高値圏で推移し、1年間の上昇率は12%に達した。高値で新規の投資流入が鈍る一方、投資家の換金売りは増えた。
鈍化が鮮明な投資需要とは対照的に、実需は堅調だった。宝飾品需要は前年比4%増。2大消費国の中国とインドはそろって前年比プラスとなった。インドは前年比1割増と伸びが大きかった。17年7月に導入した物品サービス税(GST)で一時は消費が冷え込んだが、農村部が好天に恵まれて農民の買い意欲が高まった。現地通貨建ての金価格が下落したのも買いを誘った。
テクノロジー分野は7年ぶりの需要増となった。世界的な景気拡大を背景にスマートフォン(スマホ)やVR(仮想現実)技術に使うセンサーや半導体向け需要の伸びがけん引した。
17年は株式市場への資金流出が目立ったが、現在は世界で株安に転じ、先行き不透明感が強まっている。金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は「株安が強気だった市場心理に冷水を浴びせ、今後は金市場への資金回帰が進む可能性もある」と見ている。
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