金の密輸対策を官民で急げ
税関で消費税を払わず、利益を得ようとする金の密輸入が急増している。来年、消費税率が引き上げられれば密輸はさらに増えるおそれがある。税関や警察、海上保安庁、民間企業などが連携した対策が欠かせない。
金の密輸は消費税率が8%に引き上げられた2014年から急増した。金の購入に税金がかからない香港などで現物を調達し、「運び屋」を雇って渡航費用の安い福岡などに持ち込む組織的な犯罪が目立つ。日本国内では消費税を加えた価格で金を売買しているから、密輸した金を国内で売れば消費税分がもうけになる。
それまで年間20件前後だった税関の摘発件数は、16年に811件、17年には1347件まで増えた。今年も件数は減っておらず、しかも摘発は氷山の一角にすぎないという。
消費税率が来年10%に上がれば金の密輸は加速しかねない。財務省は密輸が発覚した場合の罰金上限額を今年から大幅に引き上げ、金属探知機を増設するなど検査体制も強化した。
重要なのは、密輸を企てる人間に「日本はもうけやすい」と思わせない体制を整えることだ。最近では客船での密輸や貨物に金を忍ばせるケースも増えている。チェックを厳重にすることは当然だ。国内外の関係機関と連携し、組織的な密輸についての情報共有も欠かせない。
世界各国のマネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金の対策を審査する国際組織、金融活動作業部会(FATF)は、顧客管理体制などが甘い日本の問題点を指摘している。
金の密輸にも資金洗浄はからむ。顧客から金を買い取る業者は、犯罪収益移転防止法に定められた本人確認などを徹底しなければならない。
東京五輪の際には外国人観光客が急増する。訪日客や金の投資家などの利便性をなるべく損なわないように配慮しながら、密輸をさせない体制をつくってほしい。