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昨年1年間の「金」の販売量が、前年より約4割増え、買取り量は2割減ったと、今年1月に田中貴金属工業が発表した。金は「安定資産」といわれるが、元本保証はなく、為替の影響も。そこで経済ジャーナリストの荻原博子さんが、押さえておくべき「金」投資のリスクを解説してくれた――。

 

金は「有事の金」といわれます。昨年前半は金価格が下落したため、後半は米中の貿易摩擦などで不安感が広がったために、金の購入量が増えたのでしょう。

 

金は紙幣や株券などと違って、金そのものに価値のある「実物資産」です。だから安心といわれますが、個人の資産を増やすための投資には、不向きな面があります。金の買い方ごとに、注意点を見ていきましょう。

 

【1】現物購入

 

金地金や金貨など現物は、買うときにも売るときにも手数料がかかりますから、短期投資には向きません。また、金の価格には消費税も含まれています。

 

たとえば、1グラム5,113円(’19年2月28日時点、以下同)で100グラムの金地金を買ったとしましょう。金の価格は51万1,300円ですが、購入手数料が1万6,200円かかり、合わせて52万7,500円必要です。

 

この金を同じ日に売却したとします。売却価格は1グラム5,028円ですから、100グラムだと50万2,800円です。ですが、ここでも売却手数料1万6,200円が差し引かれ、手にできるのは48万6,600円です。

 

売買の前後を比べると、4万900円の損失が出ました。金100グラムを約50万円と考えると、損失は約8%です。金を買うなら長期保有を。

 

また、株には配当、証券には分配金など保有期間にも多少の利益が付きますが、金にはありません。

 

さらには、金の保管場所は貸金庫などが多いのですが、そうした保管にもコストがかかります。

 

【2】純金積立

 

毎月決まった金額を積み立て、少しずつ金を買っていく方法です。金は積立先で保管され、いつでも金地金や金貨などで、または売却して現金で受け取ることができます。なかには現物での受け取りができない純金積立もあります。

 

積立金は月1,000円からと、手ごろな金額のコツコツ積立といわれますが、実は落とし穴があります。意外と手数料が高いのです。積立手数料は、積立金額の2.5%程度。年会費は必要なものもあり、手数料もコツコツ払うことになります。

 

【3】金ETF

 

ETFとは上場投資信託のことで、金の価格と連動したものを金ETFといいます。証券会社などで、数千円から購入できます。金ETFは現物や純金積立と比べて、信託報酬が0.5%程度と、手数料が安いのが特徴です。

 

ただ、売却時に現物の金を受け取れないものが多いので、金がほしい方は、現物の金と交換できる金ETFを選ぶといいでしょう。

 

金の国際価格は全世界共通です。ですが日本では、ドルから円に換算するため、為替の影響を受けることも覚えておきましょう。円安になれば金の価格は上がり、円高になれば金の価格は下がります。

 

金は安定資産とはいえ、元本保証のない投資です。リスクはつきものだということをお忘れなく。

経済ジャーナリスト

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