黄金のトイレ、海外の人々魅了(古今東西万博考)
2010年・上海
2010年の上海万博では、パビリオン「日本産業館」に出展された「黄金のトイレ」が話題をさらった。黄金色に輝く姿は、ゴールド好きで知られる中国人が日本のトイレへの関心を高めるのに一役買った。
"世界一"と銘打った黄金のトイレはINAX(現LIXIL)が提供した。当時の最高級機種を塗装し、1台につき十数グラムの金を使ったという。もちろん温水洗浄式だった。ただ、利用するには抽選に当たらなければならず、入場者10人あたり1人に限られた。現在、黄金のトイレの1台はINAXライブミュージアム(愛知県常滑市)に展示されている。
日本産業館は1970年の大阪万博でも活躍した堺屋太一氏(故人)が総合プロデューサーを務めた。「きれイ、かわいイ、きもちいイ」をコンセプトに掲げ、ユニークで質の高い日本製品・サービスを売りこむ狙いだった。中国からのインバウンド(訪日外国人)が日用品や化粧品などを買いあさる「爆買い」の呼び水にもなった。中国の温水洗浄便座の普及率は現在、1割弱と日本の8割には大きく及ばないものの「出荷数は日本並み」(黄金のトイレに携わったLIXILの井戸田育哉氏)。中国には何百ものメーカーがひしめくという。
温水洗浄便座は欧米由来で、67年に国産化したINAXは欧州メーカー製品を参考にした。もっとも、欧米で温水洗浄便座は当時と変わらずいまも医療機関向けなどに使われており、一般に普及していない。井戸田氏は「中国から欧米に向かう旅行者が増えれば、トイレの洗浄文化が広がるかもしれない」と期待する。
(戸田敬久)
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