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人と知恵がつなぐ

作家、写真家、ドキュメンタリー映画監督の大西暢夫さんが長年の取材で見えてきた社会の「大きな円」を描きます。

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/8 金沢・金箔職人 究極の手作業「和紙は命」 /愛知

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湿った箔打紙に唾液をつけ剝がしていく。1800枚を一枚一枚確認していく2代目の中村孝一郎さん
湿った箔打紙に唾液をつけ剝がしていく。1800枚を一枚一枚確認していく2代目の中村孝一郎さん

 和紙がないと金箔(きんぱく)は打てない。

 紙と金属の関係はとても深い。絡み合った技術と知恵が、究極の手作業にまで進化した気がする。張り詰めた五感が生み出した技だろう。わずか4グラムの金が畳1畳にも広がる技術だ。

 いつものことのように淡々と作業する箔職人たち。ダダダダとミシンのような速さで箔を打つ。金と紙が互いに幾重にも挟み込まれた束は、辞書のような分厚さがあるから、どれだけ伸びているかその場で確認することはできない。経験と勘しかないだろう。

 金沢駅に近い中村製箔所。2代目の中村孝一郎さんが湿りっ気のある茶色の薄い和紙の束を一枚一枚、丁寧に剥がしながら語った。「手で打っていた時は、500枚くらいを重ねた束だったが、機械を導入してからは1800枚に変わったよ」

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