金箔の裁断機、職人技を再現 金沢のDAISE
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石川県を代表する伝統的工芸品が金箔や銀箔などの「金沢箔」だ。箔と和紙を交互に1000枚以上重ねた積層体を正方形に切る裁断の工程がある。職人が専用の刃物を使って手作業で切っている。負担を減らそうと、省力化機器などを手掛けるDAISE(金沢市)が開発したのが箔の裁断機だ。
積層体を据え付け、樹脂製の立方体で上から押さえつける。ハンドルを回すと、刃物が降り、立方体に合うように切れていく。90度向きを変え、さらに3回繰り返すと、きれいな束ができあがった。誤差は0.5ミリメートル以下という。
刃物はジグザグに動いている。まっすぐに切ると、紙の抵抗で外側に流れてしまうからだ。職人は刃物を横にスライドさせながら切るという。その技を機械が再現した格好だ。
石川県箔商工業協同組合に6月ごろに納入する予定だ。職人らに実際に試してもらい、気に入った事業者に買ってもらう。価格は税別120万円程度を予定する。金箔業界の関係者から「重労働なので早く欲しい」との声が寄せられているという。
金箔などの業界では積層体の切断工程の効率化が課題となっている。職人が高齢化する一方、後継者が不足している。さらに専用の刃物をつくる人も高齢化しているという。県箔商工業協同組合は工程の機械化を金沢市などに相談したが、開発に名乗りを上げる企業がいなかった。県内の経済団体を経由してその事情を知ったDAISEが開発に着手した。
まず2019年、電動式の裁断機を試作した。1台400万円程度で販売しようとしたが「高すぎて買えない」との声が相次いだ。コストダウンを狙って、あえて手動式にしたのがこの裁断機だ。大久保龍司社長は「職人でなくても使うことができる機械を目指した。金沢の箔業界活性化のための地域貢献」と話す。
同社は1969年創業。スプリングや板金など部品加工から始め、その後、産業機械の開発にも取り組むようになった。21年9月期の売上高は約3億円。部品加工のほうが多いが、省力化機器の開発にも力を入れている。金箔の裁断機を通じて技術力を売り込み、さまざまな業界での省力化需要の取り込みにつなげる考えだ。
(石黒和宏)